13話 夏だ!海だ!水着だ!(前編)
「いらっしゃいませ〜」
入店すると、お姉さんが声を掛けてくれる。
そう、わたし達はついに水着売り場にやって来てしまったのだ。
「よーし、あたしは自分の水着探してくるからユニとアリスはカオルの水着見繕ってやってくれ、すぐに合流するから」
ミリアちゃんはそう言って、露出度の高い水着が置いてあるエリアに向かっていった。
「さて、カオルさん。まずはどうやって下半身をカバーするかですわ、身体的に子供用の水着しか選択肢はありませんしなかなか難しい問題ですわね……」
やっぱりここでもわたしの発育の悪さが弱点になってくる、男の子らしい成長が来てしまっても困るからそれよりかは今の身体のほうが良いんだけども。
「カオルお姉ちゃん、この水着お揃いで着ようよ!」
そうアリスちゃんが見せてくれたのは、セパレートタイプの水色の水着だった。各所にフリルが付いていてとても可愛らしい。
何より、腰まわりにもフリルがスカートのように付いていることで股間の部分も上手く隠せそうだった。
「うん、これは良いかも。可愛いしスタイルも隠せそうだし」
「それじゃあカオルお姉ちゃんとお揃いだね!」
無邪気にはしゃぐアリスちゃん。何歳も下の子供とお揃いの水着ってのはちょっと心にくるけどアリスちゃんが楽しそうだしいっかと思えちゃう。
そんな事を考えていると、後ろから聞き慣れた声がかかってくる。
「お、カオルの水着決まったのか? あたしも水着決めたぜ」
そんなミリアちゃんの手には、ボールでも包めそうな大きさのビキニがあった。
「こ、これが胸囲の格差社会と言うやつですわ……」
「うう、スタイル良いの羨ましい……わたしにもちょっとは胸があれば……」
「ミリアお姉ちゃん、やっぱり色々と大きいよねー」
わたし達持たざる者は羨むしかなかった。
「あたしも特に意識して育てた訳じゃないんだけどな。毎日しっかりと食事を取って、運動して、よく寝るって基本を守ってるだけさ」
そうミリアちゃんは言うけども、どうあがいても生物学上どうしようもないわたしはブラにパッドを入れたりしてささやかな抵抗をするしか無かった。
「うう……ミリアちゃんが羨ましい……」
「あー……なんていうか、カオル、済まない。ところでユニは水着決まったのか?」
はぐらかされちゃった、急に話題を振られたユニちゃんが困ったように話す。
「
ユニちゃんは大人しくおしゃれに行くと思ってたから、露出度高い系に挑戦してみようって言葉は意外だった。
ユニちゃんは身長はわたしとアリスちゃん程じゃないけど小さめだ、だけどスタイルは良いし大胆に行くのも良さそうかも。
「そんなわけで、皆さんの意見を聞きたいですわ。大人しい水着にするか攻めた水着にするか」
わたし達の意見は一緒みたいだった。
「せっかくのバカンスだ、大胆に行くのもいいと思うぜ!」
「ユニちゃんなら露出度高めでも似合うと思うよ、スタイル良いし」
「ユニお姉ちゃんも一緒にはしゃいじゃおうよ!」
皆の意見を聞いて、ユニちゃんは覚悟を決めた表情で言った。
「皆さん、分かりましたわ。
おおーとわたし達グループで歓声が上がる。これでみんな水着は決まったかな。
「よし、みんな水着は決まったな。それじゃあ早速海だ海! 泳ごうぜ」
テンションが高いミリアちゃん、どうも後でユニちゃんからこっそり聞いた話だとこの街、アクベンスを目指した理由は海と夏祭りと海鮮料理らしい。全力で楽しむ気まんまんのミリアちゃんに思わず笑っちゃうわたし。
けどわたしにとっても魅力的なラインナップだった、異世界の夏祭りはどんな感じなんだろうって想像したり、海鮮料理も興味がある。ミリアちゃんの事は責められないかも。
そうして4人とも水着が決まったので会計を済ませて外に出ると、翼くんが待っていてくれた。
「翼くん、待っていてくれたんだ。暑くなかった?」
「いや、さっき待ち始めたところだ、問題ない」
翼くんはあまり水着選びに時間掛けそうにないタイプだし、気遣ってくれたのかな。
と思っていたらミリアちゃんがぐいぐい押してきた。
「みんな揃ったな、じゃあいよいよ海だ! 早く行こうぜ!」
ミリアちゃんに背中を押されて歩きだす、日本では海に行ったことって無いからこの世界で始めて海を経験することになるね。
期待とちょっとの不安を抱えつつ、海に向かうわたし達だった。
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