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「あっ。来た来た。ようこそ。私の結婚式に」
「は?」
「え?」
「なんですか。その格好。スニーカーにジーンズ?」
「うん」
「ドレス着ろよ。ドレス姿だけ見ようと思ってきたのに」
「着ないわよ。ドレス。さ、入って入って」
誰もいない式場。
「結婚式は?」
「結婚式。うん。これが私の、結婚式よ。というか、結婚式だったはずの、何か」
「なにそれ」
「死んだのよ。恋人。5年前ぐらいに」
しばらくの、無言。
「なにそれ」
「死んだのが受け入れられなくてね。嘘ついてたの。私。ここで結婚式する、なんて言ってさ。ごめんね。仕事とか。押しつけちゃって。明日からはちゃんと」
「辞めます」
「え?」
「辞めます。仕事。あなたの隣にも、いられない」
「何を」
「好きだったのに」
「私が?」
「死んだひとと比べられないじゃないですか。勝てない。普通の結婚式よりも、つらい。ごめんなさい。辞めます」
「あっ待って」
式場の扉。閉まる。
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