第5話 α

 めちゃくちゃ晴れた。

 ふざけんなって思った。

 なんでこういう、上司の晴れの日に。晴れとか。ありえない。ありえないわ。

 それでも、結婚式場に向かう。足取りは重い。

 式場で、仕事を辞めると上司に言うつもりだった。いや、もう辞める。辞めるから、上司じゃない。彼女。

 彼女でもない。他人。どこかの誰かと結婚する、知らない他人。他人だから。もう関係ない。

 どうでもよくなった。機能走った影響で、今日はうまく歩けない。あしもと。おぼつかない。

 式場。

 めちゃくちゃゆっくり歩いたのに。着いてしまった。


「あれ?」


 場所、間違ったかも。人の気配がないや。

 式場の扉。

 開けようと思ったけど、やめた。なんか私が結婚するみたいに思えてしまうから。それは、いやだ。上司に。彼女に。笑われたくない。


「帰ろうかな」


 そう思ったとき。

 扉が開いた。

 彼女。

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