060 リタvsラクネ<リタ視点>

 私に向かって来た相手はアラクネ族のオバサンだった。


「お前を殺してラングの目の前で引き裂いてやるわ!」


 アラクネ族の得意技であり、少しでも触れたら捕らわれて身動きが出来なくなると言われるアラクネの糸を網目状にして投げつけてくる。


「ひっ! オバサンの糸気持ち悪いです!」


「誰がオバサンですって!?」


 ものすごい形相のラクネが近づいてくる。


 今度は網目状ではなく糸のまま一直線に飛ばして来た。範囲重視ではなく速度重視に切り替えたみたい。


 私の腕に糸が絡みつく。


「つぅかまぁえたぁあああ!」


 もはやホラーにしか見えない形相でラクネがニヤリと笑う。


 でも、私は動じない。四天王と戦いになる事を想定してラングさんと特訓を行なってきたからだ。


 糸を引く力を利用して、接近してきたラクネの顔に裏拳をお見舞いする。


「ぎゃあっ!!」


「攻撃力低下! 守備力低下! 素早さ低下!」


 ついでに弱体化の魔法をかける。


「私に一体何をしたのよおおぉぉぉ!!」


 8本の脚をめちゃくちゃに振り回し攻撃してくるが、素早さの下がった攻撃は簡単に回避することが出来た。


「やぁっ!!」


 蜘蛛の柔らかい腹に拳を当てると寸勁すんけいを放つ。ボコッと大きく凹んだ。


「ぎゃあああああああああ!!」


 慌てて後退するラクネ。


「ラングの前で殺す予定だったのだけど、もういいわ! ここで殺してあげる!」


 ラクネは魔法を唱え始めた。この呪文は私も知っている。ポイズンの魔法だ。通常なら手のひらサイズの毒の玉を飛ばす魔法のはずだけど、ラクネの毒魔法はその10倍はある。


「死になさい! ポイズン!!」


 私は息を止め両手を顔の前で交差させて毒玉の中に突進する。皮膚が毒に侵食されていく。でも、口に入らなければ即死するようなことはない。


 そのまま毒玉を突き抜けてラクネの顔面にストレートパンチを放つ。


「あぎゃっ!!」


 ラクネは顔が大きく腫れて更に毒がついている。


「キュア! ……ぷはぁ~」


 肌についた毒を解毒する。解毒できるけど何度もポイズンを受けたくはない。


「肌にも悪いです! もう怒りました!」


 脳震盪のうしんとうを起こしているラクネの腹部を蹴り上げ、拳、肘、膝を使った連打で集中攻撃を加える。


 バァン!!


 柔らかい腹部が破れて破裂する。


「ぎゃあああああああああああ」


「――っはああああああ!!」


 渾身の力を溜めて蹴り飛ばすと、ラクネはボロボロの状態でグオーガの居る陣地にふっ飛んでいった。


「ふぅ……やっぱり昆虫は苦手です」


 私はラクネが飛んでいった方向を眺め、少し休憩を取ったらラングさんのところにいこうと思うのだった。

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