059 勇者
敵軍はほぼ無力化した。それよりも問題はこいつらだ。
「俺様の軍に何しやがった!? いつもいつも俺様をイラつかせやがる!」
今にも飛びかかってきそうなグオーガの肩に手が置かれる。
「まぁ、落ち着きたまえ。勇者である私があの男を捕らえてここまで連れてきてあげるよ。この戦の大将である君が出るまでもない」
優男といった風貌の男がグオーガに話しかける。
「む、たしかにそうかもな。よし、お前に任せよう」
「相手は3人組のようです。殺さずに捕らえるのはなかなかに難しいので2人を抑えてくれる助っ人を付けてくれませんか?」
「ふむ、ラクネとスライ、助っ人として行ってこい!」
「溶カス! 溶カス!」
「いいわ。そのかわりラングを拷問する権利は私が貰うわよ!」
グオーガが出てくると思ったのだが、勇者とラクネとスライという謎の組み合わせのようだ。
『レベルアップ! レベルが12800になりました』
『スキルレベルアップ! パイソンのレベルが9になりました』
奴らがごちゃごちゃ相談している間にほとんどの敵兵を倒してレベルが上がった。パイソンのレベルまで上がったようだ。
だが、詳細を確認している余裕はない。すぐ近くまで勇者達が迫って来ているのだ。
ガキィン!!
勇者の聖剣と魔王剣ダークヴルムが斬り結ぶ。
「その剣いいですねぇ。さっきのグラビティとかいうスキルもその剣のおかげなんでしょう?」
勇者の狙いはこの剣だったのか。
「この剣が欲しいのか? だが、お前には扱いきれないだろう」
魔王剣ダークヴルムを扱うにはかなりの筋力を要する。
「今まで扱いきれなかった武器などありませんのでご心配なく」
チラッとリタを確認するとラクネと戦っている。ラビリスはスライと戦っているようだ。強くなった彼女達なら援護は必要ないだろう。
俺は目の前の勇者に集中することにする。
「じゃあ、死んでもらいますよ。グランドクロス!!」
勇者の周囲が光り輝く。この光に触れた者は大ダメージを受ける。俺は余裕をもって後方に飛び回避した。
「なかなか素早いですねぇ。あの距離で外したこと無かったのですが」
「お前、レベルは7000くらいか?」
勇者の動きを見て直感的に思った事を言ってみた。
「て、敵に情報を渡すわけがないでしょう! しかし、私のレベルはそちらよりも上とだけ答えておきましょう」
少し慌てた様子を見ると図星のようだ。今の俺の強さがどの程度なのか、1つの指標になると思ったのだが相手が弱すぎて参考にならないかもしれないな。
あえてスキルを受けて、どの程度耐えられるか試すのもいいかもしれない。
「これで終わりです! ホーリースラッシュ3連斬り!」
全ての攻撃を生身の腕で受けてみた。浅く切り傷がついた程度だ。
「少し痛いがその程度だな。もう確認は終わりにしよう。じゃあな」
「へ?」
俺が剣を下から上に斬り上げると勇者は真っ二つになった。本人は何が起こったのかも理解していないだろう。
殺さずに倒すことも出来たが、奴は魔族を殺しすぎた。ほとんど苦痛を感じなかっただろう事が、せめてもの情けである。
俺がグオーガを振り向くと奴は信じられない物を見たという顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます