057 惨劇

 魔王軍に加勢することを決めた俺達は要塞の出口に到着した。しかし、外の様子がおかしい。敵兵の死体が転がっているが、魔王軍の兵士も多く死んでいる。その中には、魔王直属軍に属している者の姿もあった。


「ひどい……」


「まさか……負けたのか?」


「お父様! お父様はどこ!?」


 外に出ると、グオーガが待ち構えていた。


「ラング、久しぶりだなぁ〜。お前に会いたかったぜ」


「……」


 久しぶりにグオーガの醜悪しゅうあくな顔を見て、怒りが沸々ふつふつと湧き上がる。


「この状況の説明をしてやろう。弱っちい魔王軍は俺様が全滅させてやったぜ! 魔王なんて最後は逃げようとしたんだぜ? 本当に情けない野郎だった。だが、俺がきっちり殺してやったから安心しろ。お前達もすぐに同じ運命だ」


「お父様を殺したですって!? 嘘よ!」


 ソニアがグオーガに立ち向かおうとするが、今の体調では無理だろう。俺はソニアを止める。


「俺に任せてくれ」


 ソニアは何か言いたそうにしていたが後ろに下がってくれた。


「おいおいお〜い! あの弱っちい貧乏君が何か言ってるんだが!」


「本当に笑えるわよね。こうやって殺される為にのこのこ出てきてくれたんだから!」


 声のした方向を見るとラクネが軍を引き連れて俺達を囲んでいる。


 もしやと思い反対側を見るとスライもいた。


 気づけば約1万以上の魔帝国兵と人間兵に囲まれていた。先頭には勇者らしき者も居る。


 グオーガは部下達とひとしきり笑うと


「ラング、お前がアンデッドになったら殺してやるって約束してたよな!」


 などと言ってきた。


「約束などしていないし、俺はアンデッドでもない」


「細けぇこたぁいいんだよ! 俺様が気に入らねぇから殺すだけよ!」


「まぁ、最初から俺もお前を許す気はない。ソニアを攫ったことを後悔して死ね」


「そう焦るなよ。こっちは軍勢なんだ。俺と戦いたければ、まずは生き延びることだな。やれ!!」


 周りを囲んでいた軍勢との戦いが始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る