053 情報収集

 グオーガ魔帝国に到着した。


「本当に要塞みたいですの……」


「門からは入れないですよね……」


「俺達の身体能力なら壁があろうと問題ない」


 俺はジャンプして壁を飛び越える。5メートルはある壁だが、全く問題はない。リタはジャンプ、ラビリスは風魔法で壁を超えた。


「なんだか雰囲気が暗い場所ですね」


「占領されて強制的に徴兵された村が要塞化した場所らしいからな。おっと、兵士が3人歩いてくるぞ。一旦隠れろ」


 俺が物陰に隠れると、リタとラビリスもそれに続いた。兵士達は巡回中のようだ。そうだ、良い事を思いついたぞ。


「リタとラビリスはここで待っていろ」


 俺は素早く物陰から飛び出る。


「な、なんだお前は!?」


「ちょっとその装備を貸してくれ」


 素早く兵士達を気絶させて装備を剥ぎ取る。そして兵士達の鎧と兜を俺達が着る。これで兵士のフリをして潜入できそうだ。兵士達はロープでぐるぐる巻きにして空き家に投げ込んでおく。


「わぁ、兵士の服なんて初めて着ましたよ! どうですか? 似合いますか?」


「リタ、潜入捜査中だということを忘れるなよ? まぁ、似合っているから安心しろ。さぁ、城に忍び込むぞ」



 俺達は中央にそびえ立つ城に潜入した。兵士のフリをすることで簡単に潜入することが出来た。


 城壁に囲まれた敷地には城と塔がある。とりあえず今は兵士達の出入りに紛れて潜入した為、城の中に居る。


 リタとラビリスにクイクイと手で合図を出す。食堂に入るように指示を出したのだ。リタ達はコクリと頷くと食堂のテーブルに座る。


 何も注文していないので少し怪しまれる可能性があるが、兜を脱ぐことは出来ないので仕方がない。俺達はその場で耳を澄ます。


 食堂に来た目的は情報収集の為だ。聞こえてくる兵士達の雑談の中から俺達に有用な情報を選び出す。


 ざわざわ、ざわざわ、とした雑音の中、少しずつ声が聞き取れるようになってくる。


「……で、例のソニア様ってどこに居るんだ?」


「なんだお前? そんなこと聞いてどうするんだ?」


「絶世の美女らしいじゃないか。俺も一目見てみたいんだよ」


「仕方がねぇ奴だな。俺はソニア様の部屋の見張りをしたこともあるから知ってるぜ」


「いいな〜! 教えてくれよ!」


「城の横に塔があるだろ? その塔の頂上だよ」


「よし! 俺行ってくるぜ!」


「待て! 塔の入り口には巨大なゴーレムが居て見張り役に配られる腕輪がないと襲われるぞ」


「マジか〜〜〜。巨大ゴーレムくらい俺が倒してやるぞ!」


「あれは人間達の秘密兵器らしいぞ。絶対にお前じゃ勝てないと思うがな」


「マジか〜〜〜。だが、俺は諦めないぞ! いつか見張り役を勝ち取ってやる!」


「ああ、まぁ、頑張れ」


 ビンゴだ。城の隣にある塔が目的の場所だったようだ。情報はこれくらいで十分だろう。一旦要塞の外に出て、戦が始まるのを待つことにする。


 俺はリタ達に合図を出し、城を出て、気絶させた兵士に鎧を返して要塞を出た。


「今日はご苦労さま。各自休憩を取ってくれ。念の為、リタは隠蔽の魔法を頼む」


「分かりました! ラビちゃん、ドキドキしたけど楽しかったね!」


「リタさんが食堂で注文しそうでヒヤヒヤしてましたの」


「えー! そんなことしないよぉ。でも、焼肉定食はちょっと食べてみたかったなぁ」


 作戦は今のところ順調だ。あとは戦いの合図を待つだけだ。

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