051 魔都にて
「お客さん、起きてください! 都に着きましたよ!」
御者に起こされて目が覚めた。
「やっと着いたか」
魔都の門を通り、とりあえず冒険者ギルドに向かうことにする。
つい癖で宿よりも先に冒険者ギルドに行ってしまう。
「ダンジョンと冒険者ギルドの往復ばかりしていたからなぁ」
冒険者ギルドに入ると、何故かリタとラビリスが居た。
「どうしてここに?」
「ラングさんならここに来ると思って!」
「私達も冒険者になったんですの!」
「なるほど、学園は無事に卒業出来たようだな」
「はい! 魔法もたくさん覚えました!」
リタもラビリスも自信満々な顔をしている。これは魔法を見せてもらうのが楽しみだな。
「もしよろしければ、今から魔法をお渡ししましょうか?」
魔法を渡す、とは俺の魔法ボックスに魔法を入れるということを指している。
「2人が良ければお願いしたい」
「問題ありませんわ」
俺達は一旦魔都を出て、人気のない森まで行き魔法を覚えることにした。
「私は新しい支援魔法と回復魔法、召喚魔法の召喚数の上限が上がりました!」
「凄いじゃないか。じゃあ、リタからは回復魔法を魔法ボックスに記録させてもらおうかな」
支援魔法と召喚魔法は記録出来ないことを既に知っている。
「私は単体攻撃魔法と範囲攻撃魔法を覚えましたの!」
「ラビリスもさすがだな。単体攻撃魔法を記録させてくれ」
範囲攻撃魔法は記録するときに痛い目に会うことを知っているので、今回は遠慮することにした。どうしても必要になったらその時に考えよう。
――その後、ヒール、リジェネ、キュア、プラズマブラスト、アイシクルショット、フレイムピアースを魔法ボックスに記録した。
「リタとラビリスのおかげで魔法のレパートリーが増えたよ。ありがとう」
「お礼を言われるほどの事はしていませんの」
「そうですよ! 魔法学園に通うことが出来たのはラングさんのおかげですから!」
「そう言ってくれると助かる。さて、魔都に戻ろう。まだ宿も探さなきゃいけないしな」
「「はい!」」
魔都に戻ろうと門を通ろうとしたが門番に止められた。
「ラング様、お待ち下さい。城で魔王様がお待ちです」
「魔王様が?」
ソニアが俺の事を伝えたのだろうか、呼ばれたからには行くしかないだろう。
「分かった。リタとラビリスはどうする?」
「私達は……」
「お連れの方も連れてくるように、とのことです」
「そうか。じゃあ、案内を頼む」
魔王は俺達に何を言うつもりなんだ? 面倒な事にならなければいいんだが。
——魔王が居る謁見の間に到着した。
「よく来た。ほぉ、以前見かけた時とは別人だな」
多分、俺の事なんだろうな。
「魔王軍を解雇されたあの日からずっと鍛えていたからな」
「魔王様に向かってその口のききかたは何だ!」
魔王の側にいる大臣風の男が顔を赤くして怒っている。
「黙れ。誰が口を挟んでいいと許可した? 今は我とラングが話しておるのだ」
「も、申し訳ありません……」
「我の配下が不躾な真似をしたな。では、さっそく本題に入りたい。グオーガ魔帝国とやらを名乗る賊が現れたことはソニアから聞いているだろう」
「ああ、聞いている」
ダークドワーフ地下坑道でもグオーガの部下に出会ったしな。
「実は賊の討伐に向かったソニアが捕らえられてしまったのだ」
「!?」
驚きすぎて言葉が出ない。あの強すぎるほど強かったソニアがグオーガに捕らえられるなんて。だが、魔王がたとえ嘘でも最愛の娘が捕らえられたなどと言うはずもない。かなり信憑性はありそうだ。
「我は魔王軍を率いてグオーガ魔帝国を殲滅するつもりだ。そして今は大部隊を編成中なのだ。ラングよ、お前の実力を見込んで頼みがある。ソニア救出に協力してはくれぬか?」
ソニア救出には協力したい。だが、俺にどのような協力が出来る? 大部隊を率いて討伐に迎えなんて言われてもそんな経験はないから無理だ。
「内容次第だ。どんな協力をすればいいんだ?」
「ふむ、なかなか慎重な男のようだな。しかし、今回の作戦では適任だ。少数精鋭の特別部隊を率いて敵地に潜入し、ソニアを救出してほしいのだ。隊員はお前が選別するがいい」
少数精鋭の潜入作戦か。それならなんとか出来そうだな。
「それならば協力する。隊員はここに居るリタとラビリスだけでいい」
「3人だけでよいのか?」
「ああ」
「他に必要な物・人材があれば城の者に言うがよい。用意させよう」
「具体的な作戦は参謀のジーグルト将軍から説明する」
ジーグルト将軍、たしか
「では、作戦の説明をする。今日から2週間後に大部隊を率いてグオーガ魔帝国に戦を仕掛ける。お前達はあらかじめ潜伏し、タイミングを見計らってソニアを救出してくれ」
「分かった。先に行って潜伏し、戦の合図に合わせてソニアを救出すればいいんだな?」
「そうだ。失敗は許されない。頼んだぞ」
チラッとリタとラビリスを見ると、緊張しすぎてそろそろ限界のように見える。
「承知した。早速準備して出発することにする」
俺は早々に謁見の間を出ることにした。
「はぁーーーー、緊張して死んじゃうかと思いましたよ」
「あと5分長引いたら危なかったですの」
「そんなにか? 俺には普通に感じたがなぁ」
「魔王様の威圧感が凄かったです!」
「その魔王様にタメ口で対応するラング様も凄かったですの!」
「そうなのか。まぁ、そんなことよりも急いで準備して出発するぞ。お前たちのレベルアップもしなければいけないし、現地で情報も集めなければならないからな」
リタとラビリスに城で最高の装備を貰ってくるように指示して、俺は馬車の用意をする。
ある程度までは馬車で進み、途中からは徒歩だ。
「「いってきまーす!」」
城で何故か人気者になったリタとラビリスは城の兵士や従者に見送られて馬車で出発した。
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