049 待ち伏せ
地上に転移すると太陽はちょうど真上に位置していた。そして、俺は大事なことを忘れていたのだった。
「やっと帰ってきたか。待ちくたびれたぜ」
俺が周りを見回すと、大勢の冒険者に囲まれている。
「漆黒のなんとかのガイガーイだったか?」
「漆黒の終焉のガイガだ! ダンジョンに逃げ込むなんて卑怯な野郎だぜ。お前が抵抗したせいで俺の部下は大怪我を負ったんだ。この落とし前をどうつける気だ?」
「正当防衛だ」
「魔族の諺を知らないのか? 『弱者に正当防衛は不要』それとこんなのもあったな『力こそが正義』つまり俺より弱いお前には何も言う資格はないということだ」
よく喋る虎だ。
「俺の方が強いから問題はないな」
「ただの馬鹿だったか。馬鹿な部下なんていらねぇ。お前ら! こいつは用無しだ! 殺しちまえ!」
「「おおおおおおおおお!」」
一斉に襲いかかってくる。
「パイソン、ジュピター自動制御。ミニデスナイトは遊撃だ」
俺はそれだけ命令するとアイテムボックスから椅子を取り出して見学することにした。ついでにテーブルと紅茶も取り出して優雅なティータイムだ。
「あいつ紅茶飲んでやがるぞ!!」
「この小さいデスナイト強すぎるぞ! 1人では絶対に挑むな!」
「ひいいい! 剣が勝手に動いてるーーー!」
周りがちょっと騒がしいな。人がティータイムをしている時は静かににしてほしいものだ。
――1時間後、俺に襲いかかる者は居なくなった。
ガイガなどは傷だらけになり、息も絶え絶えとなって座り込んでいるのが見える。
「ガイガーイ、気は済んだか?」
「ガイガだ……俺の負けだ。殺せ」
「断る」
「な、何故だ!?」
「……」
その後が面倒だからだが、言い訳のようで言い出しにくい。
「何故答えない! まさか……俺達を殺すのは惜しいと思ってくれているのか!?」
む? なんだか勘違いしているようだぞ。早く訂正しなければマズい気がする。
しかし、良い言葉が思いつかない。
「強い上に敵を許すほど度量が大きい……魔族としての格が違い過ぎる! ……どうかアニキと呼ばせてくれ!」
「断る! どう見てもお前のほうが年上だろ」
「そんな……じゃあ、心のアニキと呼ばせていただきますぜ!」
そうだった。こいつには話が通じないんだった。
「ハァ……好きにしろ。俺はもうこの街を去るから関係ないしな」
「アニキ! どこに行くんですかい?」
「答えるわけがないだろう。じゃあな」
俺は話の通じないガイガを置き去りにして走り去った。そして、首なし馬車に乗り込み、魔都デモンズパレスに行くことにした。
「そろそろリタ達が学園を卒業する時期だ。ここから魔都までは1ヶ月程度かかるからちょうどいいだろう」
俺は馬車に揺られながらのんびりと魔都に向かうのだった。
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