048 死神
「まずは小手調べじゃ!」
大鎌を高速回転させながら俺に飛ばしてきた。この大鎌は何度叩き落としても死神の元に戻っていくので、回避に専念したほうがいい。
「そうじゃ、回避が正解じゃ。じゃが、これはどうじゃ?」
大鎌が5本に増えた。前回は躱せなかった5本でも余裕を持って回避できる。
「この程度か? 今の俺なら余裕だな」
「言ったな? それなら……これはどうじゃ!」
大鎌を召喚しては投げる死神。回避し続けているが、終わりがない。ふと周りを見ると地面に刺さった大鎌に囲まれている。
「そういう作戦か!」
「もう逃げ場はないようじゃのう!」
逃げ場を失った俺に最後の大鎌が刺さった。
「いいや、問題ない。GAN解除」
俺の幻影が消えて、本物の俺は安全地帯から現れる。
「なんだって!?」
「テンペスト!」
俺は試しにテンペストブリンガーのスキルを放ってみる。真空刃の嵐が死神に襲いかかる。
「ちょこざいな! その程度でわしを倒せると思うたか!!」
大鎌の一閃で蹴散らさせれた。更に余波が俺のところまで届く。
「くっ!! 通じないとは思ってたが、ここまで強いとはな……」
「ふむ、次はこんな試練はどうじゃ?」
死神が6体の影を召喚した。姿形は死神に似ているが、顔がない。
「これは、わしの影じゃ。火水風土光闇の属性を持っている。さて、勝てるかのう?」
影の色が違うからなんとなくそんな気がしていたが、本当に6属性に別れているとはな。
6体の影が同時に俺に攻撃を仕掛ける。
「熱っ寒っ! 各属性で同時攻撃はやめろ!」
たしかに苦戦はしているが、なんとなく相手の動きが単調なことに気づいた。気づいてからは1発も攻撃を受けることもなく回避出来るようになる。
「パイソン、武器作成」
パイソンのスキル、アイテム創造を行い今必要な武器を作る。
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【氷刀ジュピター】
ランク:S
攻撃力:+10000
属 性:水
スキル:絶対零度(消費MP0)
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神刀ジュピターを継承し、店売りの水属性武器の水属性を付与した武器だ。
「はっ!!」
死神(火属性)を斬りつけると、防御しようとした火の大鎌を断ち切り、更に死神も一刀両断した。
同じ要領で各属性のジュピターを創造し、1体ずつ減らした。
「なかなかやるではないか! ここからは本気で行くから覚悟するのじゃぞ。この大鎌に触れたら即死じゃからな!」
「即死は反則だろ……パイソン、ジュピター自動制御! ミニデスナイトは命を大事に後方支援!」
俺の後方に8本のジュピターが浮かび上がる。こうなったら総力戦だ。
死神が想像を絶する速度で俺に接近し、大鎌を振りかぶる。
自動制御のジュピター2本が大鎌を防御するが、砕け散ってしまう。
「パイソン、アイテムボックス!」
即座にアイテムボックスからジュピター2本を補充して立て直す。
「それそれそれ!!」
死神が大鎌を振るう度にジュピターが砕け散る。何度もジュピターを補充しながら、勝機を探る。
「この程度の実力か……。つまらぬ。もうよいわ。次の一撃で最後じゃ!」
「!?」
死神の大鎌から膨大な魔力を感じる。次の一撃に全てを賭けるしかない!
「わしの全力を食らうがいい!」
死神の大鎌が大上段から振り下ろされる。その瞬間、後方で待機していたミニデスナイトがドラゴンファングを投擲した。
「ぬっ!?」
油断していた死神はとっさにドラゴンファングをはじくが、一時的に集中を削がれたようだ。
「今だ! ジュピター!」
大鎌に8本のジュピターが同時に攻撃を加える。大鎌にヒビが入る。もうひと押しだ。
「砕けろ!!」
俺が大鎌のヒビを斬りつけると、大鎌は砕け散った。だが、ジュピターも砕け散った。
このチャンスを逃すと次はないだろう。ジュピターをアイテムボックスから取り出す時間はない。
俺は死神の肩を掴むと思い切り頭突きした。
「痛った〜〜〜〜〜〜!!」
死神は頭を抑えてうずくまる。この程度の攻撃で痛がるのは意外だが、まともに攻撃を受けたことがないのであれば痛みに慣れていないのかもしれない。
俺はアイテムボックスからジュピターを取り出して死神の首に刃を当てた。
「俺の勝ちだ」
「わしに頭突きを食らわせた奴は初めてじゃ。今回は負けを認めてやろうではないか」
涙目になった死神は負けを認めた。
「お前を倒さなくてもダンジョンをクリアしたことになるのか?」
「大丈夫じゃ。ここの主はわしじゃからな。それにしてもお前呼ばわりとは失礼な奴じゃ」
「名乗らなかったのはそっちだ」
「今から教えてやるからちゃんと覚えるのじゃぞ。……ゴホン!」
死神は咳払いをすると何故か真面目な雰囲気を作り始めた。
「我が名はシックス。汝、何の為に力を求める?」
突然の豹変ぶりと質問に驚いたが、その問の答えは簡単だ。
「生きる為だ」
「それだけか? ハッハッハ! 死神を倒した者にふさわしい答えじゃ。お主のことが気に入ったぞ。手を貸してやろう」
「そうだ、お主の従者は他人の召喚物のようだな。お主の召喚物に変えてやろう。あとついでに進化もしてやるぞ」
パイソンの書が光る。
『死神シックスがデスナイトの主人を変更します』
『死神シックスの恩恵により、進化を開始します』
ミニデスナイトの姿が白く輝き、将軍っぽい見た目に進化した。
「デスナイトジェネラルに進化したようじゃな。しかし、サイズは小さいままじゃな」
「見た目は気にしていない。が、知り合いは小さいほうが良いと言っていたな」
「ふむ、そういうこともあるかもしれぬのう。おまけで、デスナイトジェネラルを収納出来るデスナイトボックスを用意してやったぞ。デスナイトボックスと唱えてみよ」
「!? ……デスナイトボックス」
空間にドアが発生し、開くと真っ暗な空間に繋がっている。
「その空間には何体でもデスナイトを収納することが出来るんじゃ。ただし、複製は出来ん。ただの収納空間じゃ」
「それでもありがたい。こいつは小さいから俺が全力で走った場合、ついてこれないからな」
さっそくミニデスナイトジェネラルを収納してみた。これはかなり便利だな。確認の為にミニデスナイトジェネラルを取り出してみると問題なく取り出すことが出来た。
「よし、1000階に進むがよい! このダンジョンのクリア報酬を得られるはずじゃ。わしはそろそろ昼食なのでな、さらばじゃ」
「ああ、じゃあな」
死神とはもっと死闘を繰り広げるかと思っていたが、あっさりと勝ってしまった。見た目は女の子だったから殺さずに済んで良かった。
1000階に上がると、転移用の魔法陣を見つけた。これで地上に戻るのだろう。
『ダンジョン攻略報酬 経験値を獲得』
『レベルアップ! レベルが12799になりました』
「500レベルアップか、かなり上がったな」
俺は夢幻ダンジョンを初めてクリアした魔族となった。
この結果を冒険者ギルドに報告したら驚くだろうな。いや、そもそも信じてくれないかもしれない。ソニアやリタなら信じてくれるだろうか。
そんなことを考えながら転移魔法陣に乗り、地上へと帰ったのだった。
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