045 666階

 ――俺が夢幻ダンジョン攻略を始めて2ヶ月と少しが経過した頃、現在の最高記録である666階に到達していた。


「ここに来るまで長かった……まぁ、予定通り1日10階層進んだ結果ではあるんだけどさ」


 目の前には、既に巨大な扉がある。きっとボスの部屋なんだろうな。


「もらった資料によるとここのボスはレベル7777か。俺のレベルは今7000だから相手のほうが格上だな」


 だが、レベルだけで勝敗が決まるわけでは無い。こちらにはユニークスキル【パイソン】がある。


 そして、俺のレベルが6400に上がったときにパイソンもLV8になったのだ。パイソンLV8はGANという名前らしい。


 Generative Adversarial Networkの略らしいが、そんなことはどうでもいい。とにかく便利なスキルであることに間違いないのだ。次のボス戦で使うことになるだろう。


 あらかじめ上級ポーションと万能薬を取り出して革袋に入れておく。右手には神刀ジュピターを持ち、左手には魔王剣ダークヴルムを持つ。


「よし、準備はこれくらいでいいか。行くぞ!」


 自分自身に言い聞かせるように気合を入れて扉を開けた。


 広大な遺跡のような空間が扉の先にあった。扉を抜け進んで行くと、遺跡は破壊されたような痕が所々に見受けられた。


「現魔王との戦いで破壊されたのか……? それとも……」


 考察しながら歩いていくと最奥に巨大な石像が設置されていた。


「嫌な予感しかしないな」


 石像は馬に乗った悪魔の姿をしていた。


「まさかこいつがボスか?」


 祈るように歩を進めると、悪魔の石像がこちらに向かって動き出した。


「やっぱり動くのかよ! パイソン、ジュピター自動制御! 敵行動パターンの学習開始! ミニデスナイトは隙を突いて攻撃しろ!」


 自動制御のジュピターが石像に襲いかかる。それと同時にミニデスナイトも挟撃する。


 石像にはヒビが入り、動かなくなった。


「なんだ? 弱いじゃないか」


 俺がそうつぶやくとパキパキと石像の表面が剥がれていく。そして、中から悪魔が現れた。弱いとか一瞬でも思った自分が恥ずかしい。


「我輩の名はガミジン。数多の兵を率いる悪魔侯爵である! よくぞここまで来た。歓迎しよう」


「馬のほうが喋るのかよ!」


「我輩の上に乗っているのはただの置物だぞ。人の姿がお望みならば……これでどうだ」


 馬はいつの間にか人の姿に変わっている。ガミジンは指をパチンと鳴らす。


「歓迎の宴だ! 死者召喚!」


 オオオオオオオオオオオォォ……


 召喚陣からゾンビ、グール、スケルトン、吸血鬼、マミー、ゴーストなど、ありとあらゆる不死モンスターが出てくる。しかも全部上位種のように見える。


「マジかよ……数千体は居そうだな」


 これは魔王も逃げるかもしれない。正直、俺も逃げたい。全てを相手にするのは面倒だ。


「あ、良い事を思いついた。あのスキルが使えるかもしれないな」


 俺は魔王剣ダークヴルムを構える。


「ほぉ、我輩の軍勢と戦う気になったか! その心意気や良し! かかってくるがいい!」


 ガミジンが嬉しそうに待ち構えている。今に見てろよ、奴を驚かせてやる。


「グラビティ!」


 俺は軍勢に向かって魔王剣ダークヴルムのスキルを発動させた。消費MPが10000もある為、最大でも10回しか撃てないが、その威力と範囲は凄まじい。


「おお〜。使えるなグラビティ」


 不死の軍団のほとんどが地面に貼り付けとなって動けないようだ。不死軍団の無力化に成功した。

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