046 悪魔侯爵ガミジン

「やるではないか! では、こちらからも攻撃するとしよう。……ブラッドクロス!」


 大量の血の逆十字が俺の周りに出現する。


「パイソン、多重シールド!」


 血の逆十字は一斉に動き出し、多重展開したシールドに突き刺さる。


 パキキキンッ!


 ほとんどのシールドを破られたがなんとか耐えることが出来た。


「我輩のブラッドクロスが防がれるのは数百年ぶりだぞ! ……むっ!?」


 ガミジンの後ろに忍び寄っていたミニデスナイトが剣による攻撃を繰り出す。それに合わせて俺も神刀ジュピターで斬りつける。


「甘いわ!」


 俺とミニデスナイトは簡単に弾かれてしまった。これが格上との差ということか。


 ガミジンはミニデスナイトには目もくれず、俺に迫ってくる。いつの間にかガミジンの手には三叉槍さんさそうが握られている。


 ガミジンは正確無比な槍さばきで俺の急所を狙ってくる。だが、あまりにも正確に心臓や首を狙ってくる為、狙っている箇所をあらかじめ予想することでギリギリ避けることが出来る。


「我輩の槍を避けるとはな……貧弱そうな見た目の割にはやるようだな! だが、これならばどうだ!?」


 ガミジンの姿を見た俺は自分の目を疑った。何故ならガミジンの腕が6本に増えており、三叉槍も6本に増えていたからだ。


「な!? 腕も槍も6本は反則だろ!?」


 俺とミニデスナイトと自動制御ジュピターでガミジンを囲む形ではあるが、どう見ても劣勢なのは俺達だ。


 何度も致命傷を避けているが、小さな傷が全身に増えていく。


「くっ! さすがにこのままじゃマズいぞ。奥の手はあるが、まだ準備中だしな」


 もしも戦いの合間に上級ポーションを飲もうとしたら、一瞬で急所を貫かれてしまうだろう。これはそういう戦いだ。


 俺が考えを巡らせていると、ガミジンの槍が俺に向かって投げられた。


「ここにきて投擲かよ!!」


 俺は敵の予想外の行動に、一瞬反応が遅れてしまった。俺は多少の怪我を覚悟で身構えた。


 ドスッ!!


 前方で大きな音が鳴ったが、衝撃はやってこなかった。前方を見るとミニデスナイトが槍を受けて俺の方向に吹き飛ばされて来ていた。


「ミニデスナイトー!!」


 ミニデスナイトはすれ違いざまにグッと親指を立てるとパリンと上級ポーションを割った。上級ポーションの飛沫しぶきを浴びて、俺は完全に回復した。


 後方まで吹き飛ばされたミニデスナイトは戦闘不能状態のようだ。


「ミニデスナイトよくやった。お前の仇はきっと取ってやるからな。パイソン、学習終了」


 奥の手の準備は完了だ。ここからは反撃開始といこうじゃないか。


「パイソン、テンソルフロー自動認識。自動カウンター開始」


「もう準備はよいのか? 面白そうな事を企んでいるようだから待ってやったんだが」


 ガミジンが余裕の笑みで近づいてくる。


「……」


 もはやこの悪魔に語りかける必要もない。一気に近づいて神刀ジュピターで斬りかかる。


 俺の剣はあっさりと受け止められた。だが、それでいい。


「何も変わらないではないか! くだらない茶番だったわ! もう死ねい!」


 ガミジンから最速の槍が放たれた。その槍は回避すら出来ず俺の心臓に刺さるだろう。……さっきまでの俺ならな。


「な……馬鹿な……」


 ガミジンの心臓にはジュピターが刺さっていた。


 テンソルフローによって敵の行動を分析し、防御&カウンターを放つように呪文を書き込んでおいたのだが、ちゃんと動いて良かった。


 その反応速度は悪魔をも凌駕していたようだ。


 パキパキと音を鳴らしながらガミジンが石化していく。


「こうなったら石像になる前に、道連れにしてやろう!!」


 ガバッと俺に覆い被さるガミジン。


「お前も我輩と同じように石像となるがよい!!」


 どうやら俺を道連れに石化するつもりらしい。


「……無駄だ。パイソン、GAN解除」


 俺がGANを解除するとガミジンが掴んでいた俺は幻影となり消えた。


「なんだと!? 我輩は夢でも見ていたのか!?」


「お前が必死に掴んでいた俺は偽物の幻影だったってことさ」


 GANはまるで本物のような偽物を作り出す能力だった。今回は俺そっくりの偽物を作り出したというわけだ。


「我輩を倒したとしても、この先に待ち構える者達にお前は殺されるであろう……フハハハ……」


 悪魔公爵ガミジンは石像に戻った。


「ふぅ……なかなかの強敵だったがなんとか倒せたな」


『レベルアップ! レベルが7200になりました』


「おお、レベルが200も上がったのか」


 まずは、ミニデスナイトを見つけて応急手当をする。多分、自然回復で持ち直すだろう。


 ガミジンの石像をよく見ると、右手には何か皮のような物が握られている。左手には篭手がはめられている。


「こいつはドロップアイテムと見ていいのかな? まぁ、もらっていくか」


 皮らしきものに触れると勝手にパイソンの書が現れて、皮がパイソンの書に装着された。


『アナコンダの書皮を装着したことによりパイソンの書が自動制御できるジュピターの本数が増えました。最大数はレベルに依存します』


「自動制御できるジュピターの本数が増えるのか! それはいいな。あとは……篭手か」


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【悪魔の篭手】

 ランク:S

 防御力:+2000

 属 性:闇

 スキル:剣ダメージ2倍


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「剣ダメージ2倍! 早速アイテムボックスに保存しよう。後でミニデスナイトにも装備させよう」


 さすがにパイソンが自動制御する神刀ジュピターには装備させられないだろうな。


「ふう、今日はさすがに疲れたな。ここにログハウスを設置してさっさと寝てしまおう」


 ログハウスを設置し贅沢な食事と風呂、ふかふかの布団に入る。


「明日から更に高い階層を目指そう。パイソンが自動制御出来るジュピターの本数が増えたので狩り効率が鬼のように向上するはずだ」


 ワクワクとした気分で眠りについた。

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