027 ラクネ没落<ラクネ視点>

「人間側に勇者が居るなんて聞いてないわよ!!」


わたくしはゴールドタウンで勃発した人間との戦争に奮闘していた。だが、突如現れた真の勇者によって徐々に人間側が優勢となりつつあった。


「し、しかし、勇者が参戦していることは事実です! どう致しますか!?」


私は選択を迫られた。このまま敗色濃厚な中でも戦うか、それとも魔王様に応援を要請するか。後者を選べば勝てる見込みが出てくる。しかし、ゴールドタウンで戦争が起こり、しかも負けそうになっている事実はバレてしまう。


「うううううう……、仕方がないわ。魔王様に連絡して援軍を要請しなさい!」


「はっ!」


ワイバーン騎兵を伝令として送った。


――その5日後、四天王であるゴールデンスカラベ族のカラベと超酸スライムのスライが援軍を率いてやって来た。


「魔王様から伝言だ。報告をおこたったお前は只今をもって四天王の任を解かれた。そして魔王軍からも追放とする。装備と財産を没収とする!」


カラベが指示を出すと、部下達が私を取り押さえた。


こんなのは絶対におかしい! 私は四天王として輝かしい経歴を築き上げてきたはずなのよ! それがどうしてこうなった? あいつよ! ラングと出会ってから全てが狂ったのよ!


「全部ラングが悪いのよ! 私のせいじゃないわ! ラングの事を報告させて! 私がラングを殺してみせるから!」


「問答無用。ラングの事ならば既に知っている。見つけ次第、魔王様のところに連れてくるよう言われているが、それはお前の役目ではない。命があるだけでも有り難いと思うのだな」


カラベは私にはもう興味がないという風にスライに顔を向けるとこう忠告した。


「スライ、お前もこの戦争で戦果を上げなければ解雇も考えられる。もちろん、それがしも同じだ。絶対に勇者を仕留めるぞ」


私は兵士達に引きずられるように連行され、ゴールドタウンから追い出された。


その後、風の噂によると、戦争は引き分けで終わったようだ。勇者に重傷を負わせたが、スライは死に、カラベも瀕死の重傷を負ったらしい。

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