025 トレインパーティー

 現在、俺は魔導ダンジョン25階で準備運動をしている。低層のモンスターは魔法一発で倒せる為、サクサクっと25階まで登ってきた。


「昨日覚えたシールドがどの程度使えるのか試しておいたほうがいいかもな」


 昨日の内にリタに協力してもらいシールドの魔法は魔法ボックスに記録済みである。果たして使い物になるかどうか。


「パイソン、シールド!」


 俺の周囲に4枚の透明な盾が展開される。盾の輪郭がうっすらと分かる。


「キングスライムはどこかな?」


 前回キングスライムを見つけたエリアで探す。


「お、居たな。ファイアーボール!」


 先制のファイアーボールが炸裂した。キングスライムがこちらに気づき、突進してくる。


 ――ボヨヨンッ!


 キングスライムはシールドに跳ね返されて後退した。


「おおー、シールドはキングスライムの突進にも耐えられるのか」


 シールドはなかなか使える魔法だということが分かった。よし、次はもう一つの新しい魔法を試してみよう。


「ライトニング!」


 新しく覚えた雷魔法だ。キングスライムを包み込むように雷が落ち、一撃でキングスライムを倒すことが出来た。


『レベルアップ! レベルが674になりました』


「おお〜! あんなに苦労して倒したキングスライムが一発で倒せた……!」


 キングスライムをサクッと倒すことが出来たので、次の階層に進んだ。


「この階層にはあのモンスター出るって攻略情報には書いてあったんだよなぁ」


 注意深く探索していくと26階層で初めて見るモンスターと出会った。


「出たな。ゴースト!」


 そう、あらゆる物理攻撃をすり抜けることで有名なゴーストだ。だが、魔法ならば倒すのは簡単だ。このダンジョンは魔法使いが活躍できるダンジョンだと言える。


「サンダーボール!」


 俺が新しくClass継承で魔法創造したサンダーボールがゴーストに直撃し、ゴーストは霧散むさんした。


『レベルアップ! レベルが675になりました』


 ちなみに呪文の内容はこんな感じだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


class Fireball:

  type1 = '火の球'

  action1 = '飛翔'

  action2 = '爆発'

  def shot():

    print(self.type1 + 'が' + self.action1 + 'し' + self.action2 + 'する')


class Thunderball(Fireball):

  type1 = '雷の球'

  action2 = '放電'


thunderball = Thunderball()

thunderball.shot()


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 最後は爆発ではなく放電するようにした。爆発では上手くいかなかったので、色々と試行錯誤した結果だ。


 俺はゴースト達をサクサクと倒しレベルアップしながら進んで行った。すると、背後から人が走ってくるような足音が聞こえてくる。


「こっちだぞ! ちゃんとついて来い!」


 冒険者風の魔族が大量のゴーストを引き連れて走ってくるのが見える。俺は物陰に隠れてやり過ごし、追跡することにした。


 冒険者は息も絶え絶えになりながら大きな部屋に駆け込む。大量のゴーストも大部屋に吸い込まれていく。その直後、竜巻が発生し、全てのゴーストは倒された。後に残るのはまれにドロップする魔導書が1冊のみだった。


「いや〜、このダンジョンは儲かりますなぁ! さすがは我らがリーダーが考案した狩り方ですわ」


 大部屋にはリーダーを褒める男、リーダーらしき男、トレインしてきた男の3人が居る。


「当たり前だろう。天才である俺様は無駄な事は一切したくないんだ。超効率的な狩り方以外許せねぇのさ」


 俺は『俺様』という単語を聞きピクリと反応してしまう。グオーガを思い出し、恐怖心と復讐心の入り混じった感情が沸き起こる。


「ゼェゼェ……でも、いいんですか? トレインに巻き込まれた他の奴らの中には死人も出てましたぜ」


 トレインしていた男は罪悪感を感じているようだ。


「効率よくレベルアップする為だ。仕方がないだろう。弱い奴が悪いのさ。学園の生徒達はお遊びでダンジョンに来ているようだが、俺達は遊びじゃねぇんだよ! それに死んだ奴らの遺品も美味しいしなぁ!」


「我らがリーダーは言うことが違いますなぁ!」


 リーダーらしき男は完全な悪人のようだ。弱肉強食の世界という意見は俺も同意する。こいつらは俺より弱ければ死ぬしかないのだ。俺は奴らの前に進み出た。


「だ、誰だ!?」


「俺は通りすがりの冒険者だ。トレインによる殺人及び殺人未遂は冒険者ギルドに報告すれば最悪死刑、良くても冒険者の登録抹消になるだろうな」


 トレインしていた男はうろたえる。だが、リーダーの男は全く動じる事なく余裕があるように見える。


「顔を見られたからには殺すしかねぇな。人型だから、サクッと殺しちまおう! ギャハハハ!」


「ヘッヘッヘ、以前殺した人型も弱かったですしね!」


 こいつらはもう何人も殺しているようだ。もはやこいつらにかけてやる慈悲は欠片もない。


「お前らに更生の余地はないな……パイソン、アイテムボックス」


 俺は魔剣テンペストブリンガーを構えた。


「おいおい、この人型野郎マジで俺達と戦う気らしいぞ! 泣いて土下座するなら命だけは助けてやろうと思ってたのによ!」


 敵も各自の武器を構えて戦いの始まりに備えているようだ。俺はリーダー格の男を最初に倒すことに決めた。リーダーが居なくなった集団は脆いことを知っているからだ。


「な!?」


 俺が一瞬で間合いを詰めてリーダー格の男の眼前に迫ると、男は驚きの声を上げた。だが、時既に遅し。俺は男が対応するよりも速く袈裟斬りに斬った。


「グガッ……! つ、強い……」


 リーダー格の男は倒れた。


「う、嘘だろ……?」


「このままじゃ殺される! 逃げるぞ!」


「逃がす訳ないだろう。ファイアーボール!」


 俺は逃げようとした男にファイアーボールを撃ち込んだ。ファイアーボールが直撃した男は粉々に吹き飛んだ。


「ま、待て! ちょっとだけ待ってくれ!」


「む……何のつもりだ?」


「いや、その〜……俺は上から命令されて仕方なかったんだ。だから、その……よし来た!」


 別の通路からトレインしてきた男が突っ込んできた。大量のゴーストを引き連れている。先程の男はただの時間稼ぎがしたかっただけのようだ。


「ライトニング10連射!」


 範囲魔法であるライトニングを10連射もすれば全てのゴーストとトレインしていた男達は全てちりとなった。


『レベルアップ! レベルが685になりました』


「ふぅ……これで学園の生徒達も安心してダンジョンでの訓練が出来るだろう」


 俺は本来の目的である50階に向けて走り出すのだった。

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