018 パイソンLV4
俺は翌日、宿の食堂で朝食を食べながらリタに相談する。
「今日は、魔導書を買いに行こうと思う。リタも一緒に行くか?」
「行きたいです! どんな魔導書が売っているのかドキドキワクワクします」
食事後、俺はリタと魔法都市でも有数の魔導書を扱っている店にやって来た。
「こんにちは。魔導書を探しているのだが……」
「お客様、どんな魔導書をご希望ですか?」
あ、そういえばどんな魔法を覚えたいか考えていなかったな。
「初級魔法の魔導書をお願いしたい」
「初級魔法でしたらいくつか取り扱っております。少々お待ち下さい」
店主は店の奥に行くと、数分後に戻ってきた。
「こちらがファイアーボールの魔導書、そしてこちらはアイスアローの魔導書となっております」
2つの魔導書が目の前に置かれた。
「これはいくらだ?」
「1冊金貨100枚、合わせて金貨200枚となります。白金貨でのお支払いでも大丈夫です」
ある程度は予想していたが、めちゃくちゃ高いな。
「物々交換で売ってはもらえないだろうか?」
魔導書の横に大きな金塊を置く。
「偽物の可能性もあるのでいつもは断るのですが、今回は特別に鑑定して本物であれば交換でもよろしいですよ。こう見えて私は鑑定スキルを持っていますので」
なんとか物々交換をしてもらえそうだ。店主は金塊に手を触れるとスキルを発動させたようだ。
「むむ! これは間違いなく金ですね。それに恐ろしく純度が高い……ゴールドダンジョン産ですか?」
「そうだ。交換してもらえるか?」
「交渉成立です」
俺と店主は握手を交わした。早速俺とリタは魔法を試せる場所まで移動し、魔法を習得出来るか試すことにした。
「まずは俺が読んでみるぞ」
「頑張ってください」
俺はファイアーボールの魔導書を開いてじっくりと読んでみた。魔法の初歩的な訓練方法、ファイアーボールの呪文、ファイアーボールのコツなどについて書かれており、最後に魔法陣が描かれたページでは魔法陣に触れろと書かれていた。
俺は魔法陣に触れてみたが、全く変化は感じられないし、呪文を唱えてもファイアーボールは発動しなかった。がっくりと肩を落としリタにファイアーボールの魔導書を渡す。リタが魔導書を読み終わり、実際に試してみるようだ。
「ファイアーボール!」
リタのかざした手のひらからファイアーボールが勢いよく飛び出し、草原に着弾し爆発した。
「リタは魔法適正が高いだけあって、ちゃんと発動出来たな。羨ましい限りだ」
「ありがとうございます。でも、ラングさんにはパイソンというユニークスキルがあるじゃないですか。私はパイソンのほうが羨ましいです」
「そうだな。俺にはパイソンがあるんだった。そういえば、パイソンのレベルが上がったのを忘れていた」
パイソンLV4の説明を見てみた。『新たにclass
魔法を記録って? もしかして魔法をアイテムボックスに入れろということだろうか?
「リタ、俺のアイテムボックスにファイアーボールを撃ち込んでもらってもいいか?」
「はい、それは構いませんが……中の物は大丈夫でしょうか?」
「多分大丈夫だと思う。ダメでも責めないからやってみてくれ」
「分かりました。ファイアーボール!」
ファイアーボールは俺のアイテムボックスに吸い込まれて消えた。アイテムボックスのリストを見ると、ファイアーボールが増えていた。アイテムボックスに魔法を入れるとややこしいので魔法ボックスを新たに作り、魔法を入れていくことにした。
とりあえずリタには魔導書で覚えたファイアーボールとアイスアローを撃ってもらった。
「もし、魔法ボックスから魔法を取り出したらどうなる?」
「どうなるのでしょう? もしかして魔法が撃てるようになる!?」
「やってみたほうが早いな」
「ファイアーボール!」
……うんともすんとも言わなかった。
「ダメみたいですね」
「パイソンのスキル説明をよく読んだほうが良さそうだな」
例文は2つあった。1つ目の例文の呪文をパイソンの書に書き込む。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
class Fireball:
type1 = '火の球'
action1 = '飛翔'
action2 = '爆発'
def shot(self):
print(self.type1 + 'が' + self.action1 + 'し' + self.action2 + 'する')
fireball = Fireball()
fireball.shot()
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「これでどうだろう……ファイアーボール!」
ドドーンッ!
俺の手のひらから火の球が生成され飛んでいった。火の球は地面に激突すると爆発した。
「すごい! ファイアーボールが出ましたよ!」
「次は魔法創造を試してみるか」
2つ目の例文の呪文をパイソンの書に書き込む。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
class Fireball:
type1 = '火の球'
action1 = '飛翔'
action2 = '爆発'
def shot():
print(self.type1 + 'が' + self.action1 + 'し' + self.action2 + 'する')
class Iceball(Fireball):
type1 = '氷の球'
iceball = Iceball()
iceball.shot()
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
この呪文は、ファイアーボールの性質を継承し、
「これで、新しい魔法を創造したはずだ。アイスボール!」
バリィーンッ!
俺の手のひらから氷の塊が生成され飛んでいった。氷塊は地面に激突すると爆発した。
「アイスボール!? こんなに短い時間で魔法を生み出してしまうラングさんってもしかして大賢者様ですか?」
「いや、パイソンが便利すぎるだけだ」
「いいえ、スキルはスキルでしかありません。使う人次第だと思います」
「それは……まぁ、そうかもしれないな。とにかく魔法が使えるようになって良かった。ただ、魔法創造は無から有を生み出すわけじゃなく、既存の魔法を組み合わせて生み出すみたいだから魔法ボックスへの記録が鍵だな」
「分かりました! 私が学園に通って新しい魔法を絶対習得してみせます!」
「俺も魔導ダンジョンで魔導書集めとレベル上げを頑張るとするか」
こうして、俺は魔導ダンジョンでの修行、リタは学園で魔法を習得することが次の目標となった。
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