009 勇者討伐<グオーガ視点>
ラングがイナカダンジョンに居る頃、グオーガは勇者討伐の為、部下を連れてイナカ村に来ていた。
「グオーガ様、ここがイナカ村です。村で一旦休憩し、その後、勇者討伐に国境付近に向かう予定となっております」
「うむ、それにしてもここはつまらない村だな。こんな村だったら勇者に滅ぼされてもいいじゃねぇか!」
俺様は魔王から命令され、不機嫌だった。
「魔王軍四天王グオーガ様、ようこそおいでくださいました。わしは村長のロイですじゃ。どのようなご用件でしょうか?」
「国境付近に勇者が現れたと聞いた。何か情報を知らないか?」
「勇者ですと!? 残念ながら、何も知りません。お役に立てず申し訳ないですじゃ」
「本当に役に立たないクズだな! 死にたいのか!?」
ドガッ!
「うぐっ!」
ひ弱で使えない村長は俺様に腹を蹴られてうずくまる。
「ハハハ! あの時のラングみたいだな。あのみじめな姿はいつ思い出しても笑えるぜ」
そう言いながら俺様は村長の頭を持ち上げて立たせる。
「酒を飲みたい気分なんだ。酒場に案内しろ」
「は、はい」
イナカ村には酒場といったらダークエルフが経営している宿屋しかないようだ。
「酒を出せ!」
俺様が来たのだから何も言わずとも酒を出すべきなのに、何も分かってねぇ宿屋だな。
「いらっしゃいませ……。えっ! 村長さん大丈夫ですか!?」
怪我をした村長を見て宿屋の店員が心配そうにしている。
「お母さん、お客さん来たなら手伝うよ」
「リタ! 奥の厨房に居なさい」
リタと呼ばれたダークエルフの少女はなかなか可愛い見た目をしている。そうだ、良いことを思いついたぞ。
「おい! そこの娘! 俺のグラスに酒を
「嫌です! お断りします!」
リタは全く動じることなく拒否してきた。
「なんだと!? 四天王である俺の言うことが聞けないのか!」
俺様はリタの腕を掴み無理やり引き寄せる。
「やめて! 攻撃力低下! 守備力低下! 素早さ低下!」
なんだこれは!? 手に力が入らない。ふざけやがって、ズタズタに引き裂いてやる! と思ったが、リタは手を振り払って外に逃げていった。
「こんな村、俺の手で滅ぼしてやろうか!」
俺様は怒りのあまり剣を抜く。
「グオーガ様! 魔王様に知られたらマズいですよ!」
部下に言われた言葉で我に返る。
「ぬぐぐ……! こんな陰気臭い村、すぐに出て国境に向かうぞ!」
俺様が魔王だったらこんな村すぐに焼き払うのにと思いながら国境に向かった。
――――数時間後。国境付近。
俺様は勇者と思われるパーティを発見した。
「どう見ても勇者見習いじゃねぇか! 余裕で勝てるぜ! お前達はここで待機しろ」
部下を待機させると、勇者見習いパーティの目の前に躍り出る。
「魔族だ! みんな武器を構えろ!」
勇者見習いとの戦闘が始まった。
俺様は最初実力の半分も出さずに勝てると見込んでいたが、全力を出している現在でも勇者見習いを倒すことが出来ない。相手の方が素早く攻撃が当たらない。
「おかしい。こんな雑魚勇者などすぐに殺せるはずなのに……ステータスでは勝っているはずだ!」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
グオーガ 28歳 キングオーガ♂
レベル:600
HP:13000/30000(50✕600)
MP:6000/6000(10✕600)
攻撃力:6000(10✕600)
守備力:3000(5✕600)
器用さ:600(1✕600)
素早さ:600(1✕600)
知 性:0(0✕600)
幸 運:0(0✕600)
スキル:豪腕LV3
デバフ:攻撃力低下LV1 (−50%)、守備力低下LV1 (−50%)、素早さ低下LV1 (−50%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「馬鹿な! 攻撃力も守備力も素早さも低下しているだと!?」
俺様がステータスを確認している隙を突いて勇者見習いが剣で攻撃する。見習いのくせに剣だけは聖剣で魔族への特攻が付与されている。
「グアッ! これでは勝てん! 退却だ!」
緊急脱出用の貴重な帰還用アイテムを取り出す。
「
部下達を置いてきてしまったが、まぁ、どうでもいい。
「くそっ! ラングが居なくなってからずっと不幸続きだ。全てあいつのせいだ。殺しても殺し足りねぇ……」
俺様は悪態をつきながら帰還した魔王城の通路を歩いていると、前方に魔王が現れる。
「ま、魔王様!?」
「勇者を倒せなかったようだな」
「魔王様! 違うのです! 今回は邪魔が多くありまして……」
「言い訳をするな。一度の失敗は許したが、二度の失敗は許さぬ」
魔王がパチンッと指を鳴らすと、近衛兵が現れ俺様を拘束する。
「グオーガを魔王軍から追放処分とする。装備と財産は没収だ」
それだけ言うと魔王は立ち去った。
「魔王様! いや、魔王! この俺様を追放だと!? ふざけるな!」
俺様は城外に放り出されることとなった。魔王から貸し与えられていた強力な武器や最高の防具も没収され、今はみすぼらしい革鎧と新兵の訓練に使われる鉄の剣だけだ。
「くそがあああ! 俺が四天王の地位を得る為にどれだけ苦労したと思ってんだ! ちくしょうが! これで終わると思うなよ!」
そして、全てを失ったグオーガは魔都を去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます