第219話 命名会議、本番2
219話 命名会議、本番2
「おほんっ。俺の考えたグループ名は、ズバリーーーー」
グループ名を考える。そのうえで心掛けたのは、やはり全員にゆかりのある名前にするということ。
だから真っ先に浮かんだのは全員の頭文字を取る案だった。けど、それは貴重な母音枠のアカネさんがどうしても一番がいいと言ったことにより難しくなって。
次に考えたのが、この案だ。
「ガーデンズ……です!」
『ガーデン? 庭?』
「はい。全員の要素を入れるってなった時になんとか共通の要素を探してみたんです。それで一番近いのがアカネさんの「茜」、ミーさんの「鳥」、アヤカの「柊」、夕凪さんの「夕」でして。全部ひっくるめて、庭から見れる景色かなぁ……と」
茜色の空と夕焼け、植物であるヒイラギ、そして木々に止まる鳥。
それら全てが同時に見られる場所として浮かんだのが、「庭」だった。
庭は色んなものを囲んで一つに括る言葉としても最適だ。だからグループ名にも使いやすいのではないかと思ったんだが。やはり庭でガーデンズは安直すぎただろうか。
『ほむほむ。なっちゃんのより何倍もいいねぇ。ま、比べるの自体失礼かもしれないけど』
『おま、そこまで言うか!?』
『まあ確かに、かなりグループ名らしくなったと思います。言葉の響きも悪くないですし』
お、意外に好印象か?
サキもなんだか隣でうんうんと頷いているし。さっきのが酷すぎたのもあるかもしれないが、案外高得点なのかもしれないな。
『ですが、ごめんなさい。和人さんは重要なことを忘れています』
「えっ!? な、なにか抜けてましたか!?」
だが、喜んだのも束の間。言いづらそうにミーさんが言葉を続ける。
『私、それだと苗字バレしちゃいます……』
「あっ」
そうだ。どうして忘れていたんだろう。
ミーさんのVtuberとしての活動ネームは「ミーちゃん」。つまり、小鳥遊南という名前は一部分も使うことができないのだ。
最悪南の方なら、ミーちゃんの由来を喋る中で言っている可能性は充分にあるが。苗字だとそうはいかないだろう。それに逆に下の名前を既に明かしてしまっているのだとしたら、苗字を喋ると完全に本名全バレだ。流石にそんなことをさせるわけにはいかない。
「わ、私は凄くいいと思ったよ? なんかオシャレだったし。よしよし……」
「うぅ。渾身の出来だったんだけどなぁ」
『な、なんかすみません……』
しかしこればっかりは本当にどうしようもない。このグループ名にするためだけに本名を明かせなんて横暴もいちところだからな。潔く諦めるとしよう。
『じゃあ残念だけど、和人君の案もボツということで。次はミーちゃん!』
『え、私ですか? 何も考えてきてないですよ?』
『うそん!? 宿題だって言ったじゃん!!』
『……ここ最近の私の業務量、知ってますよね?』
『ア、ハイッ。スミマセンデシタ』
となると。残りは二人か。
現時点、五人中三人がボツ、ないしは考えていない状態だ。PVの関係などもあって今日中に決めると言っていたが。本当に大丈夫なのだろうか。
まあでも……うん。大丈夫か。
俺は知っている。アカネがーーーーサキが、このグループ名を考えるのにここ三日三晩、毎日考え込んでいたことを。
俺なんかと比べてよっぽどセンスのある奴だ。アカネさんだって普段はこんなだが、Vtuber的なセンスはもちろんピカイチ。ある意味最後に残ったこの二人は、本命と言って差し支えないのかもしれない。
『ではミーちゃんに変わりまして私が。ズバリ、アカネーズ!!』
あ、本命片方潰れた。
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