第217話 アヤカのクレーンゲーム配信3

217話 アヤカのクレーンゲーム配信3



 オンラインクレーンゲームには、アシスト機能というものがある。


 主な活用方法としては二つ。


 一つ目は初期位置への置き直しだ。どうしてもアームが届かない位置に行ってしまった場合や動かない形になってしまった時に店員さんに景品の位置を最初の形に直してもらうことができる。


 そして二つ目。こちらはアシストついう呼び名にふさわしく、救済措置にあたる。


 お金を散々注ぎ込んだのに取れない。そんな時に各会社ごとの基準に従って景品を簡単に取れる位置にまで進めてくれる。


 今回アヤカがしてもらったのはまさにそれだ。さっきまではほとんど動いていなかった(動かせるだけのアームパワーは存分にあったが、アヤカがそれを全く活かせていないだけである)箱が店員さんの手によって動かされ、二本の突っ張り棒の間にギリギリ落ちるか落ちないかの形で設置された。


 おそらくこれならアヤカでも。アームが少しでも触れれば落ちるだろうし、次のプレイで獲得だな。


ーーーーまあ、本人は全く納得していないみたいだが。


『……むぅ』


:ご立腹で草


:ま、まあゲットはゲットだから(震え)


:普通こういう時って忖度とか言う奴出てくるのにここでは一人もいないの草


:そりゃそうやろ……


:むしろノーリーが可哀想まである


 これは案件配信だ。コラボ先である企業からお金を貰い、″より良い形での宣伝″を仕事として任されている。


 それだというのに、コイツは……


『納得いかない! こんなの私の実力じゃないもん!!』


 いや、これこそが。俺たちの大好きなアヤカの姿なのかもしれないな。


 一直線で、盲目的で。自分が楽しむことに全力な姿に何度も元気を貰った。


 ゲームは下手だし、かっこつけようとしてもいつも失敗ばかり。


 しかしそれでも自分の姿勢を決して曲げずに努力しているその姿が、愛おしくて。たまらなく推してしまうのだ。


『まだ時間ある……よしっ! こうなったらあと二十分で意地でも一つ獲得するからね! アシストされないよう、最短で最速で真っ直ぐにッ!!』


 結果から言うと、この案件配信は大成功に終わった。


 ツオッターではVtuber部門で『柊アヤカ』がトレンド一位を獲得し、同接数も上々。ノーリーオンライン側からも配信が終わった後感謝のメールが届いたとか。


 通報どうこうとか言っていた時はどうなる事かと思ったが。最後には三本爪での自力獲得(三本爪は巷で確率機と呼ばれており基本的に天井金額に到達しないと取れないが、アヤカの場合は奇跡的にアームに景品が引っかかって本当の自力獲得をしていた)も達成し、本人も満足した様子だった。


 まぁ……


「和人! 私にクレーンゲーム教えて! 今度リベンジ配信しようと思ってるの!!」


「……」


 その結果、サキの中でクレーンゲームのブームが来たらしく。俺はそれに散々振り回される羽目になるのだが。



 それも俺だけの特権と思えば。悪くはない……か。

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