第215話 アヤカのクレーンゲーム配信1

215話 アヤカのクレーンゲーム配信1



『みんな〜! こんアヤカ〜! 柊アヤカだよ〜!!』


 夜九時。今日も今日とて、アヤカの配信が始まる。


:キチャッ!!


:こんアヤカ〜!


:とりあえず挨拶ということで ¥1000


『さて、今日やっていくゲームはね。オンラインクレーンゲームアプリ、ノーリーオンライン! ほら、みんなゲームセンターでノーリーって知ってるでしょ? あの店舗のオンライン版だよ〜!!』


 アヤカはいつもその明るい笑顔と口調で視聴者を和ませているが、今日は特に上機嫌な様子が画面越しからも伝わってくる。


 それもそのはず。


『そしてなんと! 今日の夕方から、このノーリーオンラインではアヤカとのコラボが始まっておりまして! 凪ママ描き下ろしの新グッズが大量導入されているのだよ!!』


 本日はなんと、記念すべき初めての企業さんとのコラボ。アカネさんたちとする配信者同士のコラボではなく、正式な依頼とお金をもとに受けた大型案件だ。


 ノーリーオンラインな概要を軽く説明すると、これはゲームセンターにいかずともスマホやパソコンから筐体を操作してクレーンゲームを行えるというアプリで、一プレイごとにちゃんとゲームセンターと同じようにお金がかかる。そしてそれに伴い、アプリ内で獲得した景品は自宅に郵送されてくる仕組みだ。


 つまり、本質的にはゲームセンターのコラボと変わらない。アヤカのグッズがこれまでアヤカから販売サイトに依頼してサイトを作り視聴者の手に渡ったことは何度かあるが、このように完全外部で全国展開というのは初の試み。どれだけの人がプレイし、景品が流通していくのか。予想がつかない。


『景品の種類は四つ。缶バッジ、アクリルスタンド、タペストリ〜、そしてぬいぐるみ! 今日は自分で全部取るまで絶対にやめないからね!!』


:あれ? 今全部取るまでって言った?


:立ちました!!


:某死神ロリが見てて草


:偽物で草


:今日は長丁場になりそうだ


『クレーンゲームなんてほとんどやったことないけどまあなんとかなるよね〜。ふっふっふっ、この柊アヤカには精神的動揺によるミスは絶対に無い! お金だってちゃんと用意してきてるもんねっ!』


:レロレロレロレロ……


:う〜ん、勝てる気がしない


:数十分後にはギャン泣きしてるアヤカの姿が容易に想像つくわw ¥550


:何人の諭吉が犠牲になることやら ¥200


 アヤカのやつ、大丈夫なのだろうか。


 ただでさえ普段から様々なゲーム配信においてポンを晒しているというのに。クレーンゲームなんて精密性をようするものをプレイできるとは到底思えない。


『よおし、早速……っと。まずは無難に一番簡単しうな缶バッジからサクッと取っちゃおうかな〜』


 画面が移り変わり、景品選択画面へ。そして宣言通り手始めの缶バッジを選ぶと、次はプレイできる台の一覧が表示された。


 設定は六種類。そして本人は勘違いしているが、どの景品からこのページに飛んでも選べる設定の種類は同じなため、缶バッジだからぬいぐるみより簡単ということはない。


 六種類の概要としては「橋渡し」、「たこ焼き」、「くじ引き」、「三本爪」、ボール落とし」、「cリング」となっている。


『たこ焼きみたいな運まかせの台は最終手段にしたいんだよねぇ。ノーリーさんもこの配信は見てくれるって言ってたし、まずはアヤカの実力をしっかり見せつけられるやつを選ばないと!!』


 そしてアヤカは、しばらく悩んで。橋渡しを選択する。



ーーーーこれが、クレーンゲーム経験者でしっかりと取り方を知っている人でも難しい、そんな設定だとも知らずに。

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