第202話 女子会3
202話 女子会3
「よ〜しよ〜し。意外と女の子だった優子さんっ。次は絶対王子様みたいな彼氏さん見つけようね〜」
「ぐすんっ。サキママぁ……」
「誰がママだって〜?」
気付けばおじさんフェーズを通り越し、優子はメンタルブルーな泣き上戸へと変貌していた。
珍しいな、ここまで優子が弱ってるの。よっぽど別れちゃった彼氏さんのことが好きだったのだろうか。あのままのテンションならそのままゆっくり深掘りしていくつもりだったのに。これじゃあ聞くに聞けないや。
「次ハイボール頼むぅ。ママ、頼んでぇ……」
「はいはい。もうママでいいよ」
注文用タブレットでハイボールを選択し、ついでにタコの唐揚げも一緒に注文する。
少しずつテーブルの上には枝豆やポテト、とんぺい焼きなんかが届いてきており、つまみも充実してきた。私も少しだけお酒飲みたいな、なんて思いつつも。対面に座っていたはずの親友が私の隣に移動してきて頬擦りし始めたのを見て絶対にダメだと思いとどまった。
「そんなに落ち込まなくても。優子なら次があるでしょ?」
「……びえぇぇっ!!」
「わっ!? ちょ、なに!?」
「お待たせしました。ハイボールで……す?」
「あ、あはは。置いといてください……」
店員さんに奇怪な目線を向けられつつ、恥ずかしい気持ちを抑えてハイボールを受け取る。
しまった。ここって周りの席と仕切りがされてるから完全に油断してたけど店員さんは普通に入ってくるんだった。変な誤解とかされてないといいけど。
「次なんてないよ。始まってすら、ないもん」
「? どういうこと?」
始まってすらいない。それは優子の恋が、ということだろうか。
とにかくモテていた優子のことだ。確かに相手が好きだから付き合うというより、とりあえずで付き合ってしまっていてもおかしくな────いや、違う。おかしい。
昨日までの私ならそれで納得していたかもしれないけれど、ついさっきこの子の口から乙女願望を聞かされたばかりだ。あんなに女の子な恋愛観念を持っている子がそう易々と付き合うだろうか。あり得なくはないのかもしれないけれど、違和感がある。
「私にはサキにとっての和人くんみたいな、一生を添い遂げられるほど好きでいられる人……いないもん」
「で、でも一応付き合ってたんだよね? 彼氏さんのこと、好きじゃなかったの?」
「……」
一瞬。ほんの一瞬だけ、″そういう目的″での付き合いを疑ってしまった。
でも、それだけは絶対に無い。私の親友がそんな事をする子じゃないことくらい、私が一番よく分かっているから。
「ねえ、サキ。怒らないって約束できる?」
「ど、どういうこと?」
「私ね? サキが思ってる以上にいじっぱりなの。いじっぱりで、嘘つきで。自分で一度ついた嘘の収集すら付けられない子なんだ……」
優子が私についた嘘。その正体はほんのうっすらだけど、見えてきていた。というか多分、これ以外に無い。
「私、本当はね。彼氏……いたことないんだよ」
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