第201話 女子会2

201話 女子会2



「ぶるぁぁっ!! だっはァァァ!!!」


「あ、あの……優子さん? ちょっとペース早すぎるんじゃ……」


「うるへぇ! 私にはサキと違って素敵な彼氏しゃんなんていないんらよぉ!!」


 いつも以上に荒ぶってるなぁ。


 きっと今回の彼氏さんとも上手くいかなかったのだろう。というか────長続きしてるところを見たことがない。


 優子はとにかくモテる。喋りも上手いし顔やスタイルも抜群だから(いつも私がそれを言うとおっぱいをビンタされるけど)男受けはいいし、正直私が男でも確実に好きになってると思う。


 なんというかこう……一緒にいて楽しいのだ。空気を読むのが上手いから私のテンションに波長を合わせて会話してくれるし、そのおかげで喧嘩らしい喧嘩だってした事がない。むしろなんでこんなに良い女の子をと上手くいかないのか。優子の男の趣味を疑ってしまうくらいだ。


「今回はフッたの? フラれたの? 愚痴くらいなら聞くよ」


「う゛うっ。サキの良心が沁みるよぉ。でもそれと同時に胸にダメージがっ……」


 そういえば優子から失恋の具体的なエピソードって聞いた事がないな。


 いつも聞くのは「付き合った」と「別れた」、「フッた」、「フラれた」という抽象的な言葉ばかり。あまり深く聞くのは良くないかなと思って今までそれでも良しとしてきたけれど、もしかしたら今日はちゃんと具体的な話を聞けるんじゃないだろうか。


 優子、今日はいつものペースよりずっと早い。飲み放題なのをいいことに気付けばここ数十分でもう三杯目に突入してるし。


 これは……チャンスなのでは?


 優子には悪いけれど、いつもいつも私の方が話をさせられてばかりだし。ちょっとくらいいいよね?


「ねえねえ、優子ってどんな人がタイプなの? たまにはそっちの恋愛話も聞かせてよ〜」


「え゛っ。うぅん……うぅ〜ん。た、タイプ……私の好きなタイプ、か……」


 どんなタイプが好みなのだろう。


 一番ピンと来るのはワイルド系やヤンチャ系。性格的にも相手も明るい感じの方が波長が合う気がする。


 だけど逆に真面目系とか大人しい感じが好きだったら、それはそれでキュンと来てしまう。あの優子が「実は甘えてくれる子が好き」とか「一途な人が好き」なんて言ってくれたらもう可愛すぎてダメだ。


「そ、そんなの無いよ」


「うっそだぁ。これまで色んな人と付き合ってきて、結局こういう人が好きだったって気づいたことない? 一個くらいあるでしょ?」


「……」


 おっ……? 女の子の波動!


 これはもしや大当たりかもしれない。優子今、明らかに目を逸らして恥ずかしがった。つまり私の想像していたような″自分のキャラ感とはズレた異性のタイプ″を持っているということ。

 

 ますます聞き出さないわけにはいかなくなってきた。優子には悪いけど、いつもいつも私は和人の好きなところとか全部吐かされてるもんね。優子のタイプだって教えてもらわなきゃ不平等だよ。


「……笑わない?」


「笑わない笑わない! もう何年一緒にいると思ってるの? 今更そんなことでバカにしたりしないって!」


「う、うぅ。じゃあ……」


 コトンッ、と空になったジョッキを置いて。恥ずかしそうに私の目を見ると、やっぱり一度逸らしたから。指で髪をくるくるさせて言う。


「あ、甘やかしてくれる……人。ちゃんと普段から好きって言ってくれて、私を何よりも優先してくれる優しい人……かな」


「っっっう!!」


 乙女! 圧倒的な乙女思考!!


 かあぁ、と顔を赤くしながら呟くようにそう言い、バツが悪くなったのかすかさず次のお酒を頼む優子を横目に。



 私は机の下で思いっきりガッツポーズした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る