第195話 和人の選ぶ道1
195話 和人の選ぶ道1
アカネさん達とのグループ結成の話をしたあの日から、二週間が経過した。
八月に入り夏休みも終盤。溶けそうになるほどの暑さが少しだけマシになった今日、俺はとある人と待ち合わせをしていた。
「お疲れ様です、和人さん」
「お疲れ様です。今日はすみません、わざわざ時間作ってもらっちゃって」
「いえ。今日はちょうど仕事も片付いてて用事もありませんでしたから」
綺麗な青髪を靡かせ白のワイシャツに身を包んでいる彼女こそ待ち合わせの相手。
小鳥遊南さん、ことミーさんである。
何気に俺たちがこうして二人きりで集まる機会はそうそう無い。だからか少しお互いに緊張してしまっているように思えた。
ちなみに集合場所としたのはアカネさんの家(兼ミーさんの家)から近い喫茶店。メッセージでやり取りしているとここのコーヒーとパンケーキが絶品なのだと聞いた。一度は車を持っていることからミーさんが俺の家の方まで来ると提案してくれたのだが、呼び出している身でそこまでしてもらうのは流石に気が引けたので、こうして電車を使い俺の方から出向いたのである。
「注文、先にしてしまいましょうか。これメニュー表です」
「ありがとうございます。えっと……コーヒーとパンケーキって一概に言っても結構種類あるんですね。どれが一番おすすめですか?」
「そう……ですね。私は一応一通り全部食べてみたんですけど、結局はブラックコーヒーとプレーン味のパンケーキに落ち着いてしまいました」
「お、大人だ!」
「普通ですよ。和人さんはブラックコーヒー大丈夫な人ですか?」
「うーん、飲めないことはないんですけどね。あんまり得意ではないです」
「じゃあ無難にカフェオレあたりがいいと思いますよ。ここは全体的に甘さ控えめですから、ハチミツをかけたパンケーキにもジュースよりはコーヒー類の方がよく合うと思いますし」
「じゃあ、それで。パンケーキも初なのでまずはプレーンからいってみます」
「分かりました。じゃあ一緒に注文しちゃいますね」
なんというか……やっぱり大人だ。
ここの喫茶店の雰囲気もチェーン店のカジュアルな感じではなくどちらかと言えばレトロ。隠れた名店、という感じが強い。こういう行きつけがある人はやっぱり大人びて見えてしまう。
いつも一緒にいるアカネさんが子供っぽいというのもあるのだろうか。俺の中のミーさんは頼れるお姉さんで、仕事のできるスーパーエリートマネージャーさんでもある。
裏方でありながらも影からアカネさんという演者を一人で支え続けている縁の下の力持ち。
多分、俺が今なりたいものに一番近いのは間違いなくこの人だ。だから今日はこうして相談する機会を設けてもらった。
「それで、今日私を頼ってくれた理由は確か進路相談でしたっけ? 和人さん、今は大学二年生でしたよね。その時期から就職のことを考えているなんて凄いです」
「い、いえそんな……。本当、そんな大それた話じゃないんです。ただ、今俺が聞きたい話はミーさんからしか聞くことができないと思ったので」
「私から、しか……?」
きょとん、と不思議そうにしながら。ミーさんは首を傾げる。
「俺、サキを……Vtuberとして進んでいく柊アヤカを、支えてあげたいんです。どうしたら……ミーさんみたいになれますか?」
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