第193話 癒しの時間3

193話 癒しの時間3



「気持ちよかったぁ。和人とお風呂浸かって流しあいっこしたおかげかな? ちょっと元気出たぁ」


「そりゃよかった。彼氏冥利に尽きるな」


 脱衣所でシャツと緩いズボンという寝巻きスタイルに着替えてから、しばらくタオルで髪の水分を取りドライヤーで乾かしていく。


 俺の方は髪が短いのですぐに終わったが、問題はサキの方。ドライヤーの他にも保湿のためのヘアオイルを付けたりと、女の子はやる事が多いみたいだ。サキ曰く他の女の子はもっと手入れをちゃんとしているとのことだけど、サキの髪はそんなことをしなくてもサラサラなので全く問題はない。


「髪、乾かそうか?」


「ん〜。お願ぁい」


「了解っ」


 鏡の前で椅子に座ったサキの背後に回ると、俺はドライヤーの電源を入れてその鮮やかな黒髪に触れる。


 しっとりと水分を含んでいながらも、ベタ付きなんかは一切無くて。ゆっくりとほぐしながら乾かしていって水分を抜いても、全く毛先が暴れ出す気配が無い。長髪ならすぐに毛先が傷んだり跳ねたりしてしまいそうなものだが、見事な直毛だ。


「気持ちぃ。和人さんドライヤー上手いねぇ。これからも任せよっかな?」


「サキのなら喜んで。この髪ならずっと触ってられるしな」


「えへへ……そっか」


 嬉しそうに頬を赤くしながらも照れるその姿は、まさに清楚そのもの。その下にある魅力的で存在感のある果実にも目が行かないほど、視線を釘付けにする天使のような可愛らしい顔をしている。


「っし……こんなもんでどうだ? 結構しっかり乾かせたと思う」


「うんっ。ね、ヘアオイルもお願いしていい?」


「勿論。俺それ塗った事ないんだけど、普通に手に馴染ませて広げていく感じでいいのか?」


「そうそう〜。もみもみしながら馴染ませてくれたら大丈夫〜」


「あいよっ」


 ヘアオイルを数滴手に落とし、少しこねて薄く広げる。そしてサキの頭の頂点のところから触り始めて、毛先に向けてオイルを塗っていった。


 こうやって触ると小さい頭だ。顔が小さいから分かっていた事だけど、実際に触ってみるとここまでなのか。撫でるのと揉むのでは感じる大きさが全然違うな。


 毛先の方まで一度オイルを広げてから、一度頭に戻る。少し指先で見様見真似なマッサージっぽいことをしてあげると「ふにゃぁ〜」と甘い声を上げてくれた。可愛い。本当、こうやって甘えた声を上げた時は猫のようだ。


「はい、終わり。どうですかサキさん、疲れの方は」


「和人のおかげでかなり楽になったよぉ。ありがとっ」


「よし。じゃあベッド行くか」


「おぶってぇ」


「……元気出たんじゃなかったのか?」


「それとこれは話が別だもん。彼氏さんのかっこいい背中を肌で感じながらベッドに行きたいなぁ」


「はいはい、分かりましたよ。今日はほんと甘えんぼだな」


 椅子から腕を伸ばすサキを背中に乗せ、おぶって。廊下を通り俺の部屋へと移動する。


 一応サキの部屋にもちゃんとベッドがあるし、ここで同棲を始めた当初は完全に寝る時は別だったのにな。気づけばそのベッドは使用頻度がかなり落ち、寝る時もゴロゴロする時もサキは俺の部屋のベッドを使う事が多い。もちろんそういうことをする時も……だ。まあ今日は流石にシないから寝るだけだが。


「下ろすぞー。ほいっ」


「ごろ〜んっ。和人の匂いがするぅ。えへへ、いっぱい嗅いじゃおっ♪」


「やめろ恥ずかしい。ほら、そんなど真ん中で寝てたら俺が入れないだろ。詰めてくれぃ」


「え〜? むぅ。じゃあぎゅっ、てしながら一緒に寝よ? ベッドの真ん中で……ね?」


「んぬっ。なんて魅力的な提案。喜んで受けます」


「は〜い♡」


 ゆっくりと両手を広げたサキの胸元に、俺はゆっくりと収納されていく。




 あっという間にサキ布団の完成だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る