第191話 癒しの時間1
191話 癒しの時間1
二人で脱衣所に入る。
サキは疲れた様子で一つ一つのモーションが襲いながらも、すぐに服を脱ぐと身体にバスタオルを巻いた。
「……そういえばサキってまだちゃんとバスタオル付けるよな。一緒にお風呂入る時」
「へっ!? ダメ……?」
「いや、駄目なことはないんだけどさ。もう色々見られた後なのに恥ずかしいんだなぁ……と」
「と、当然だよ。というかタオル巻くのにはそれ以外ももっと大事な理由があるよ?」
「大事な理由?」
コクッ、と無言で頷いてから。俺に腰巻きタオルを渡して言う。
「……その、二人とも裸で入っちゃったらさ。シちゃう、でしょ? 前だって、ほら……」
「っ!? あ、あぁ。そういうことか。てかそれ俺のせいだな、うん……」
かあぁっ、と羞恥心で耳まで赤くするサキから思わず目を背ける。
そうだ。思い出した。旅行に行って二人でそれぞれの初めてを交換し合ったあの日も、その後も。何度か一緒にお風呂に入ることがあったけど、その時は大抵″そういうこと″をする雰囲気になったっけ。しかも俺から。サキの身体が魅力的すぎて、いつもいつも抑えられなくなってしまうのだ。
だからあのバスタオルはサキ自身を守る本当の意味での盾だ。恥ずかしい気持ちもを隠すこともできれば、その魅力的な身体で俺の欲情を仰いでしまうのを防ぐこともできる。その中でも特に後者の役割はかなり大きいだろう。
「分かればいいのっ。あと和人もちゃんとタオル巻いて! ……私だって、″同じ″なんだから」
「〜〜〜っ!! ごめん!!」
俺と同じ。その言葉に隠されている意味を察して、俺はすぐにタオルを巻いた。
そうだ。恋人に見惚れておかしくなってしまうのは俺だけではない。本当に喜ばしいことに、サキもまた────
だから俺たちは各々局部を隠せるよう、タオルを纏った。今日の疲労を持ち越したまま一晩……なんてことになれば、間違いなく明日は一日中筋肉痛と体調不良に悶えることになるだろうしな。溢れ出そうな気持ちを抑えるのではなく、そうなる前にしっかり対策をしておかないと。
二人とも準備が完了し、脱衣所から浴室へ。
先ほど沸かしたお湯は既に浴槽の中を埋め尽くしており、まずは俺から、掛け湯をしてゆっくりと浸かった。
「ふぅ……気持ちいぃ……」
「あつっ!? ちょ、和人このお湯大丈夫なの!? 火傷しちゃいそうなくらい熱いよ!!」
「大丈夫だってぇ。ほら、サキも早く入ってこ〜い。気ん持ちいぃぞぉ〜?」
「っぐ。ひっ! うぅ……」
掛け湯でお湯の熱さに悶えてから、ゆっくりと上げた脚の指先を水面に付ける。
ぴくっ、ぴくっ、と何度か警戒するように指を濡らしてから。ゆっくり……ゆっくり膝まで入水していく。
「あっ……つぅ。待って、ちょっと待ってね和人。ゆっくり入らせて……」
「はいはい。ゆっくり────なっ!」
「ひにゃぁぁっ!? ちょ、和人ぉ!!」
ぱしゃっ。もどかしい速度で少しずつ身体を浸けていくその無防備な背中に、あっつあつのお湯をぶつける。
その瞬間よく響く浴室内にサキの悲鳴が響き渡ると、涙目で振り向いて抗議するように俺を睨みつけてきた。可愛い。
「え? 今のってフリじゃないのか? ほら、押すなよ! 押すなよ!! みたいな」
「ちがうよぉっ! むぅ……いじわる」
「はは、ごめんって。でも早く浸かった方がいいぞ。すぐに身体も慣れてくるだろうし」
「……ん」
俺の指示を聞いて、ようやく。サキはもう一度背を向けると、まだ少しゆっくりながらも浴槽に入水して行って。ようやく、肩までお湯に浸かる。
「はふぅ。気持ちぃ……」
「さっきまで熱い熱いって身体ビクビクさせてたのにな」
「う、うるさいなぁ……もぉ」
全く、サキのビビりというか、全てにおいてよわよわな体質には困ったものだ。
……まあ、そこも可愛いんだけども。
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