第189話 二人の関係性は5

189話 二人の関係性は5



 ミーさんから聞いた話だと、アカネさんはかなり前から……もっと言えば初めて会ったあの日から、俺とサキの関係性を勘づいていたらしい。その後サキがボロを出すことも多く、ミーさんも悟ったんだそうな。


「すぴぃ……」


「とことん場を荒らすだけ荒らして寝やがりましたね、アカネさん。許しませんよ……」


「すみません。その、なんというか。サキとのこと、隠してて」


「い、いえ。アカネさんとは元々既知の仲だったわけでもありませんし、Vtuberという職業柄彼氏バレなんて一番の炎上ネタです。隠すのは最もですよ」


「あ、あのっ! 私、そんなにボロ出してましたか!?」


「えぇ……。私はそういう色恋沙汰に疎い方ですが、それでも気づけましたしね」


 まあ確かに時々お兄ちゃん呼びを忘れていたし、サキの方が我慢できなくなってしまって隠れてイチャつくことも多かった。


 机の下で手を握ったり、二人の目を盗んでキスをしたり。もしけしたらそういう積み重ねの中で、何かを見られたのかもしれない。或いは見るまでもなく、″そういう関係″だというオーラを出してしまっていたのか。


 何はともあれ、悪いのは俺たちだ。


 本当はもっと早く、俺たちの口で言わなければいけなかった。アカネさんとミーさんを信頼しているのならば余計に。


「ごめんなさい、隠していて。俺とサキは付き合ってます。柊アヤカとしてアカネさんたちに会うとなれば、彼氏がいるというのはバレない方がいい。少なくともしばらくの間は兄妹のフリをして様子を見ようって。俺から言ったんです」


 ミーさんとアカネさんは怒っているだろうか。初対面は何の面識もない仲から始まった関係だったとしても、今ではたまに遊んだり旅行に行ったりする仲になったのに。こんな重要なことを隠していた。バレていたとしても、俺たちは隠そうとしていた。そのことに対して。


「っ……んぅ。ごめんなさい、ミーさん」


「そ、そんな謝らないでくださいよ! 私もアカネさんも、全く気にしてませんから!」


 たじたじとどこか焦るようにしながら、ミーさんは言う。


「あの、アカネさんはこのことに対して何か言ったり……」


「へ!? あ、えっと……」


「も、もももしかして怒ってたんですか!? 確かにアカネさん、隠し事されるのとかすっごく嫌いそうだし!!」


「ちがっ! 違います! えと、そのっ!!」


 え、なんだその顔。まるでアカネさんの言っていたことは俺たちに伝えづらい、みたいな。


 やっぱり怒っていたのだろうか。ミーさんは気を遣ってさっきああ言ってくれたが、少なくともアカネさんは。俺たちの関係性に対して────


「……ふん、するって」


「え?」


「さ、サキさんが和人さんを恥ずかしそうにお兄ちゃんって呼ぶところとか、私達に隠れてイチャイチャしてるところを見ると……興奮、するって。言ってました……」


「「……」」


 かあぁっ、と。ミーさんとサキの顔が真っ赤になっていく。


 俺も顔が熱い。俺たちに伝えづらい感じを出していたのはこういうことだったのか。シンプルに口にすることが恥ずかしい、と。


「も、もうこの話はやめにしませんか!? と、とととりあえずこれからは兄妹のフリをする必要はありませんので! アカネさんには明日、私から旨を説明しておきます!!」


「そ、そそそうですね! じゃあえと、お願いします!!」


 そうして、長かった。本当に長がった一日が、終わっていく。


 ミーさんは酔い潰れたアカネさんの看病を。俺たちは夜もいい時間になり始めたので、その後しばらくしてアカネさん宅を出た。




 色々なことをしすぎて……もうヘトヘトだ。

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