第188話 二人の関係性は4
188話 二人の関係性は4
「すみません……本当、すみませんでした……」
「い、いえ。その……凄いですね。酔いが覚める早さ」
暴走寸前にあったアカネさんを傍に抱えながら、ミーさんは深々と頭を下げる。
サキからなんとか百合暴徒を引っ剥がしてからしばらく。とりあえず二人に水を飲ませた。
するとミーさんは瞬く間に酔いが覚めて復活。本人曰くマネージャー業を続けていく中で身につけたスキルらしい。何それ俺も欲しい。
と、まあそんな感じで。ミーさんだけがあれだけの量のお酒に塗れたにも関わらず正気に戻り、アカネさんを制御する本来の役割へと戻ってくれたのだった。
「う゛ぅ〜。お義兄様ズルい! サキちゃん独り占めしちゃやら〜!!」
「ひっ」
「ちょっと。暴れないでくださいアカネさん。サキさん、怯えちゃってるじゃないですか」
中々濃密な……それこそ、全年齢ではお届けできないような濃密百合に巻き込まれかけたサキはというと、俺の後ろに隠れて静かにアカネさんの様子を伺っている。
「まあ、とりあえずミーさんが元に戻ってくれて良かったですよ。これで安心してここにいられますから」
ミーさんさえ酔いを覚ましてくれれば、アカネさんのことはちゃんと抑えていてくれる。サキも帰ってきた事だし、改めて宴会を始められそうだ。
「ほら、サキも隠れてないでさ。アカネさんが何でも宅配で頼んでいいって。食べたいもの、あるだろ?」
「え、いいの……? 当の本人はあんなことになっちゃってるけど」
「にゃ〜♡ サキちゃんが構ってくれないならいいも〜んっ。ミーちゃんにちゅっちゅしちゃお〜!」
「ちょおっ!? どこ触って……ひゃんっ!?」
「あ〜、うん。あんまり深く考えるな」
そうして酔い潰れる前、ミーさんたちと広げて眺めていたチラシに視線を落とす。
サキは俺と違って何かを摘んだわけでもないだろうし、相当お腹が空いているはずだ。宅配されてくるまでしばらく時間がかかることを考えれば、とりあえず早めに注文だけは済ましておきたい。
「えへへ、美味しそうなものがいっぱいだぁ」
「今日はアカネさんたちとグループを組むことができたことと、夕凪さんを誘えた記念日としての宴会だ。サキは主役だし、遠慮しないでいいと思うぞ。ほら、お寿司とかうな重とか、色々あるし」
「わあ、わぁっ! もうお腹ぺこぺこだから全部美味しそうに見える!! じゅるり……」
まあ、紆余曲折あったものの。こうやってこれまでと変わらず、四人で(これからはもう一人増えるのだろうが」食卓を囲むことができて、本当によかった。
アカネさんからの突然の提案から本当にどうなることかと思った。ただでさえアヤカがグループ入りするかという部分もあったのに、その上即日でもう一人、俺の付き添い無しで誘いに行くタスクを任せられるなんて。
でも、結果的にはそれもうまくいったわけだし。ハッピーエンドだ。結果的に見れば何もかもが上手く運んで、理想的な着地をしたと言える。
「あーっ! お義兄様とサキちゃんがイチャイチャしてる!! 何机の下で手、繋いでんの〜!!」
「へっ!? あ、やっべ……つい無意識に」
「こ、これはその、違いますよ! 安心してつい、と言いますか……」
「もぉ、いつもいつも見せつけてぇ。────こんなラブラブなカップル、そうそういないよぉ!!」
「「…………へ?」」
「あっ……」
ぷくぅ、と頬を膨らませて不満顔で放った、アカネさんの言葉。
その内容に、俺とサキは思わずフリーズして。ミーさんもまた、やってしまったと言わんばかりの顔で。
(バレ、てたのか……!?)
それはそれは、とてもいたたまれない空気感が完成してしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます