第187話 二人の関係性は3
187話 二人の関係性は3
「こ、これは……?」
ガチャッ。リビングへ続く扉が開く。
「おぉ!? おかえりサキ! 待ってた! 死ぬほど待ってたァァ!!」
「わっ!? か、和人? 一体どうしたのこれ……」
アカネさんとミーさんが呑み始めてから三十分。リビングは地獄絵図と化していた。
「ひゃひひ! ミーちゃぁん……だぁい好きだよぉ!! ぎゅ〜〜!!」
「……ヒック。暑苦しいれす」
まずアカネさんは言わずと知れた強アルコールなお酒、「鬼泣かせ」をパック三個。よく路上でおじさんがストローをちゅうちゅうさせながら酔い潰れているアレである。それをペロリと三個呑み干したはいいものの、そこから豹変。今ではミーさんにさっきまで以上にべったりで、もはや押し倒しそうな勢いだ。
そしてミーさん。唯一アカネさんを制御できるストッパー的存在なこの人もまた、とんでもないことになっていた。
彼女が呑んでいたのは俺があまりお酒に詳しくないこともあってか、知らない名前のもの。分かっていたのはそれが日本酒だということだけだったが、その飲み方に問題があった。
一升瓶に入っていたそれを、あの小さいお猪口でちびちびと呑んでいたのだが。継ぎ足すペースがとにかく早く、一口一口は小さいのに気づけばあっと言う間に一本丸々中身が無くなっていて。後からこっそり確認してみたら、度数は驚愕の十八パーセント。確かアカネさんの呑んでいた鬼泣かせですら十パーセント前半だったはずだから、それを大きく上回る数値だ。
というわけで酔い方こそ違うが、ミーさんもベロベロである。頬は真っ赤に紅潮し、目はとろんと。アカネさんのストッパーとして機能するどころか今では二本目の一升瓶に手を伸ばし、アカネさんの抱きつきにもろともせずまたお猪口を口に運んでいた。
「あ〜、サキさんが帰ってきてますぅ。ほら、アカネさん……さっさとぎゅ〜ってしてあげてくらひゃ〜い」
「へぇっ!? ちょっ────」
「に゛ゃあぁぁ〜!!」
サキが抵抗虚しく押し倒される。
というかミーさん、あんた今制御するどころかアカネさんを使役してなかったか? 猛獣使いみたいになってるぞ。
「わ、わぷっ……和人ぉ! 助けてぇ!!」
「ぐへへ、へへへへへっ。よいではないか。よいではないかぁ〜」
ん? ちょっと待てよ?
アカネさんが身体を這うようにサキに覆い被さり、押し倒したかと思ったらよじ登って目をハートにしている。
たゆんっ、たゆんっ、と触られそうになりながらもなんとか逃げるたわわと、涙目で助けを求めてくるサキ。そんな彼女を逃すまいと襲いかかるアカネさん。
「な、中々濃密な百合だな……」
「和人さぁん! 諦めないで!? というか楽しまないでぇ!? 早く助けてよぉぉぉお!!!」
どうしよう、助けなきゃいけないんだろうけど割り込みたくはない。
アカネさんとミーさんという熟年夫婦じみた百合も良かったが、これはこれで……
「って、違ぁう! 俺は百合好きでもntrは趣味じゃねぇッッ!!」
ギリギリのところで我に帰る。
そうだ、このまま放っておくとサキをアカネさんに取られかねない。それも肉体的な意味で。
急いで救出しなければ。
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