第186話 二人の関係性は2
186話 二人の関係性は2
「ん〜、んん、んぅ〜!! うんまぁ〜!!」
「ちょっとアカネさん、具材こぼれかけてますよ。あとケチャップがほっぺに付いてます」
「えへへぇ、ミーちゃん取ってぇ」
「自分でしてください。ティッシュあるでしょう」
「えぇ〜? でも両手塞がってるも〜ん」
「全く……仕方のない人ですね」
「ありがと〜、ミーちゃんなんやかんや言って優しいもんね♪」
なんだこれ、凄い百合だな。俺はマルゲリータピザのチーズを伸ばしながらそんな事を考えていた。
カップル? いや、熟年夫婦の方がお似合いだろうか。甘える子供のようにしているアカネさんと、口では文句を言いながらも結局お世話してしまうミーさん。アニメや漫画の世界にしか存在しないと思われていた百合が今、確かに目の前にある。
そういえば結局のところ、この二人はどういった関係なのだろう。Vtuberとマネージャーというだけにしてはあまりに距離が近すぎる。そもそも住み込みで働くという名目とはいえ同棲までしてるわけだし。
まあ結局そこに首を突っ込むのは野暮だと分かっているので、口出しはしないが。百合の間に挟まる男は死刑だと昔から相場が決まっている。
「おっ、お義兄様が食べてるやつも美味しそう! 一切れいただきぃ!」
「ちょっとアカネさん、それで何枚目ですか? ただでさえ運動してないのにそんなに食べたら太りますよ」
「ふっふっふ、私は太らない体質なのだ。そ〜れ〜に〜く〜ら〜べ〜て〜ぇ〜? ミーちゃんも結構食べてるみたいだけど?」
「う゛っ。わ、私はほら、マネージャー業で歩き回っていますから。アカネさんと違い外にもよく出ていますし……」
っと、二人のイチャイチャ百合を見せつけられながらピザを摘んで。しばらく経った頃にアヤカ達の配信が終わり、枠が閉じられる。
ごはんは向こうで一緒に食べてきたりするのだろうか。この様子だと結構仲良くなったみたいだし有り得なくはなさそうだが。
しかしそんな考えとは裏腹に。サキから届いたメッセージ二件を確認すると、夕凪さんを無事グループ勧誘できたこととこれから電車に乗ってこちらに戻ってくるとのこと。確か片道にかかる時間は一時間ほどだったはずだから、暗くなる前に戻ってくる選択肢を選んだようだ。
「アカネさん、サキ今からこっちに戻ってくるらしいですよ。勧誘も成功したみたいです」
「お、ほんと!? ま〜女好きなあの人のことだからサキちゃんを召喚すれば絶対断らないだろうとは思ってたけどね。じゃあ今日は改めてグループ創設を記念したパーティーだ!!」
「ぱ、パーティーですか? あの、もうピザ食べちゃってますけど……」
「こんなのただのお菓子じゃん! 夜にはまた別で色んなもの頼も! ピザ追加してもいーし、他のお店のでもいーし!!」
「う、うぅ……本当に太らない人のムーブ、ズルいです……」
確かにさっきからむしゃむしゃとピザを頬張り、既にLサイズピザ丸々一枚レベルの量をぺろりと平らげているうえにその提案。とてもじゃないが、カロリーや体重を気にしている人にはできないことだろう。
「よぉし、お酒も呑むぞ〜!! 酒池肉林の始まりじゃあ!!!」
「も、もう知りません。私も呑みます!!」
凄い、とんとん拍子に話が進んでいく。話というかまあ、アカネさんの独壇場だけども。
(サキ、早く帰ってきてくれ。酔っ払い二人の相手を一人でってのはキツすぎる!!)
俺は悪化していく現状に、強く恋人の帰りを祈るばかりだった。
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