第185話 二人の関係性は1

185話 二人の関係性は1



「いや〜、相変わらず見てて楽しいねぇ。アヤカちゃんの配信は」


「ですね。俺もやっぱりアヤカのファンなので。つい見入っちゃってました」


 アカネさん宅。グループ結成の話し合いを終えた後、すぐに夕凪さんのスカウトに行ったサキだったが。彼女が極度の男嫌いという話を受け俺はここでお留守番することになった。


 サキ一人で行かせるのはかなり心配だったが……どうやら杞憂だったらしい。夕凪さんとオフコラボをしているということはつまり″そういうこと″だろう。


「ねえねえお義兄様、お腹空かない? 私もミーちゃんも実はお昼まだでさー! もしお義兄様もだったら遅めの昼ごはん、一緒にどう?」


「お、いいですね。サキのやつはまだ帰ってくるまでにしばらくかかると思いますし。軽めのものだったら」


「軽めのもの、ですか。ならお寿司かピザあたり……ですかね。各々が食べたい分だけ食べられますし」


「ピザ! よしピザにしよう!! 今すぐデリバリーだぁ!!」


「はいはい、分かりましたから。じゃあ注文の電話入れますね」


 相変わらずアカネさんのお金でご馳走になっていいらしい。この人は太っ腹というかなんというか……お金を使うことにビックリするくらい抵抗が無いな。


 まあ本人曰くそれができるくらいは稼げているそうだし。あと高いブランド物とかお金のかかる趣味があるわけでもないらしいから、結局使い所はVtuber関連の機材かどこかへ行くガソリン代、食事代がほとんどなそうな。それだけお金を稼いでいながら余計なものに手を出していないというのも何気に凄いな。俺ならついつい豪遊してしまいそうだ。


「ピザの種類、どうしますか? 無難な物ならミックスとか、マルゲリータとか。あとは照り焼き? とかも美味しそうですよ」


「そこはミーちゃんのセンスに任せようかなっ! あ、でもサイズは絶対Lサイズね! あのふかふかでぶっとい耳が美味しいんだから!!」


「分かりました。和人さんは何か欲しいものありませんか? 遠慮なさらず言ってくださっていいんですよ」


「え? あー……じゃあ俺もミーさんに任せます。嫌いなピザとかありませんし」


 何より奢ってもらってる身だしな、と心の中で付け足しつつ。もう多分こういう事は慣れっこなのだろう。ミーさんはほとんど迷う素振りも見せず、一度だけメニューのチラシに目を通してからすぐ電話をかけた。


「はい。はい……ミックスピザのLが一つと、マルゲリータのチーズトッピングLサイズが……」


 アカネさんの言いつけ通りLサイズというところは外さず、あとは無難な注文を、という感じだろうか。チーズトッピングとかを付けるところを見るとやはり普段から何度もピザ配達を使っているんだと感じる。もし俺が頼むとなったらデリバリーよりも遥かに安くなる店頭受け取りにしそうだが、やはりそこはお金持ち。容赦なくデリバリーを使い、優雅に家でピザを待つ。


「ピザ〜♪ ピザ〜っ♪」


 独特なリズムで変な歌を歌うアカネさん。電話を切ったミーさんは脚を崩したままお茶を啜り、さっきまで電話をするため一時的に音を消していたアヤカの配信の音量を元に戻して、画面を見つめる。





 なんとも平和な時間が流れていた。

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