第184話 静香とサキ
184話 静香とサキ
「んがぁぁぁぁ!! なんか絶妙に悔しい! この私がたったの二パーセント差でしか勝てないだとぉ……っ!?」
「え、えへへ。でもやっぱりママの絵、とっても可愛かった。ちょっとエッチなのはアレだけど」
配信を終えたサキは床の上で足を崩し、夕凪はゲーミングチェアの上で頭を搔く。
結局夕凪からアヤカへの罰ゲームは『アヤカのドスケベメイド絵を二人で描く配信を行う』で落ち着いた。夕凪にとっては一度色塗りまでしたものを完成形に持っていくのみの作業だが、アヤカにとっては自分のドスケベ絵を完成させるのを手伝わなければならないという。歪んだ性癖の人にブッ刺さりそうな罰ゲームである。
事実夕凪リスナーとアヤカリスナーはとうの昔に性癖をぐにゃんぐにゃんに捻じ曲げられているので大喜び。特にアヤカリスナーは新たな形での羞恥アヤ虐に大興奮。配信での同接人数はかなり期待できるだろう。
「は〜ぁ。ほんでお前絵上手いなぁ。隠してたのか?」
「き、聞かれなかったから言わなかっただけだよ。それに私のは本当に部活動レベルで、プロの人たちみたいな画力は無いもん」
「ま、私は描き始めた時今のアヤカより数百倍ヘタクソだったけどな」
「えっそうなの!?」
(ママみたいな人でもやっぱり、いっぱい努力して今があるんだ……)
サキは素直に感心しつつ、立ち上がる。元々別の部屋にあった机を戻しに行こうとしたのである。
そして自分が描いた絵を見ながら。思ったことをそのまま口にした。
「ね、もしグッズが出せるようになったら今日私が描いたこのデフォルメ絵、使わない? デフォルメキーホルダーとかにして!」
「お〜! いいなそれ! じゃあそれまでこのスケッチブックは大切に保管しとかんと……」
配信では言い合いや口喧嘩のような仕草も多い二人だが、裏では当然そんな事はなく。夕凪の奇行セクハラこそあれど、彼女を心から尊敬しているサキから本当の拒絶が返ってくる事はない。
Vtuberという絆で結ばれた母娘。偽りの血縁関係とも呼べるそれの効果は絶大なのかもしれない。
「机直すの、私も手伝おう。アヤカ、そっちの角持って────」
「えへへ、ママ? 今の私は柊アヤカじゃないよ?」
「え? あ〜、そういやそうか。えっと……」
「赤波サキ、っていうの。私の名前。よければ裏ではサキって呼んでほしいな」
「お、おう。なんかむず痒いな……。じゃあ私は日暮静香だから……いや、やっぱいいや。私は夕凪のままで」
「え〜? 静香ママも可愛いと思うよ?」
「ヤメロォ! なんかその響き絶妙にガチママの人妻感あるんだ!! というか私に静香って名前は似合わんだろ!!」
「う〜ん、まあママがそこまで言うなら……」
こうして、アヤカと夕凪のオフコラボは終わり。静香とサキとしての緩やかな時間が流れていく。
そしてその後、アカネと南が美人だと言うことを聞きつけ絶対に会ってみたいと強く訴えた夕凪とまた再び、次はグループに属する四人としてオフで会う約束をして。暗くなる前に和人へ一報を入れると、アカネの家へ戻るべく電車に乗ったのだった。
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