第156話 ミーちゃんデビュー配信2

156話 ミーちゃんデビュー配信2



『では早速いくつか質問をしていきます。ミーちゃんはそれに答えてください。いいですね?』


『ひゃ、ひゃいっ。よろしくお願いします』


『じゃあまずは年齢を』


『あ、アカネさんの二個歳上でしゅっ』


『緊張してる?』


『はい、とても。胸がはち切れそうです……』


『そうなんだね。人前でこういうことするの、初めてなのかな?』


『初めて、です』


:◯Vの冒頭質問だろこれ


:質問のチョイス良くないなぁ?


:ハァハァ( ˊ̱˂˃ˋ̱ )


:初めて……ミーちゃんはまだ未体験……へへっ、へへへっ


『あ、あの、アカネさん? なんかコメント欄がざわついてるんですけど……』


『はは、大丈夫だよ。私達の視聴者層ってほとんどの人が男の子だから、みんな過敏に反応してるだけ。決して変なことはしてないからね』


『そう、なんですか? ならいいんですけど……』


:純粋無垢すぎる……


:あ、ダメだこの子。ホスト行ったら一瞬でカモられる子だ( ・∇・)


:¥5000


『さて、まあお遊びはここまでにして。今日は私のマネージャー、ミーちゃんのこれからのことを話していきますよぉ。私は隣にいるけど、ここからはミーちゃん主体で喋ってもらいます。それじゃ、はい。どうぞ』


『わ、分かりました! えっと……皆さん、初めまして。アカネさんの専属マネージャー、ミーです。これまではずっと裏方にいたんですけど、この度Vtuberとしてデビューさせてもらうことになりました……』


 お堅いセリフと自己紹介から、ミーはこれからの活動方針を語った。


 まず、ミー自身はアカネのように定期的な配信を行う活動をするわけではないということ。今回はあくまで、Vtuberとしての身体を獲得したこととその上でチャンネルを開設したというのが主。ただしこれまでのように完全裏方ではなく、アカネの配信にお邪魔したりコラボ配信参加したりはする、とのこと。


『あ、あまり表舞台には立たないかもしれませんが……それでも、その……応援してくれると嬉しいです』


:当たり前だよなぁ!!


:は、何この子クッソ可愛いんだが


:むしろそのスタイルの方がレアキャラ感増して良い


:表に少しでも出て来てくれるだけで感謝( ^ω^ )


:好き ¥50000


『ふふっ、みんなありがとね。ミーちゃん、始まる前は死ぬほど緊張してたみたいだったけど、今はすごく楽しそう。これからは私の配信にもかなりの頻度で呼ぶつもりだから、期待してて!』


『か、かなりの頻度で呼ぶんですか!?』


『もちろん! だって、ほら────』


:オォォォォォォ!!! ¥11451


:マッジで最高!! いっぱい来てくれぇぇ!!


:無理はしないでね! けどたくさん配信に顔を出して欲しい!!


:やったぁぁ!!!\\\\٩( 'ω' )و ////


:待ってます!!!!!


『みんな、それを望んでるから』


『っ────』


 誰にも必要とされていない。そう自らを悲観し人生に絶望した少女は、一人の人間と出会い第二の人生を歩み出した。


 そして、今。たった一人の一番として頼られ続けることに加えて、数多くの。顔も知らない相手だけれど、確かにそこにいる。そんな大勢から、認められた。


『ありがとう……ございます』


 気づけば南は、その目から大粒の涙を溢れさせていた。


 アカネと出会い、人に頼られる嬉しさを知った。自分はここにいていいのだと、自信をもらった。そんな人生を次の段階へと進めて、更に理解者と応援してくれる人達を見つけた。


 これ以上の幸せはない。気づけば緊張の糸もほつれ、アカネの胸の中で。


 あの日のように、ひとしきり泣き続けた。


「もう、いきなり泣き出さないでよぉ。配信まだ続いてるよ?」


「き、切ってください! 泣いてなんて、ませんから……っ!!」



 こうして、彼女は晴れて。ただのマネージャーから、マネージャー兼Vtuberとして。新たな道を歩み始めたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る