第152話 アヤ凪コラボ配信4

152話 アヤ羽コラボ配信4



『はい、というわけで。……うん、今日はここらへんで終わろっか?』


『ぜぇ、ぜぇ……もう絶対アヤカと難しいゲームはしない。次からはババ抜きとか神経衰弱みたいなガキンチョでもできるゲーム配信しよ? な?』


『ひ、酷い!? アヤカ頑張ったでしょ!? なんとか一ステージクリアできたじゃん!!』


『それだけで配信の時間ほとんど使う奴があるかぁ! 私相手とはいえ仮にもコラボ配信なんだぞこれはぁ!?』


:ぶっちゃけ、一ステージいけただけでも奇跡()


:俺たち見届けたよ。なんとか、見届けたよ……バタッ


:同じ画面の繰り返しを見続けたせいでリスナーが死んだ! この人でなし!!


:( ・∇・)


:(゜∀゜)


:(・∀・)


 辛辣な言われようなのも、もはや仕方がない。


 ようやく第一ステージをクリアすると、配信枠の残り時間はあと五分。本当に、ゲームができるギリギリの時間を使い切ってしまったのだから。


 だがそんな残念タイムもここで終わり。この五分は、予定されていた発表の場。最後の最後で、盛り返しを見せるのだ。


『まあまあ、色々とありましたが最後に発表があります! きっとこれを見たら今日の疲れなんて全部吹っ飛ぶよ!!』


『発表……ああ、あったなそんなの』


 ででどんっ、と画面を切り替えると、アヤカの立ち絵が消える。


 声のみが乗る暗闇から、その声だけが反響した。


『今日ママとコラボしたのには、ゲームで遊ぶ以外にも目的があったのだ! この暑い夏、こんな衣装じゃ暑苦しいよねぇ!?』


『刮目しろお前ら! 私の渾身の一作だぞ!! 目に焼き付けてから拡散して死ぬほど辱めてやれ!!』


『柊アヤカ、新衣装だぁぁぁぁ!!!!』


 バンッ。画面に表示されたアヤカは、水色の水着を着てニッコリと笑っていた。


 ビキニタイプの、シンプル無字柄。お腹周りまでしか見えていなかったさっきまでとは違い全体像を見せたその姿は、スラリと細く白い肌に薄い水色が乗っかっていて、とても綺麗な印象を見せつける。


 人にとっては子供っぽい無邪気さが。人によっては落ち着いた大人っぽさが。見る人によって印象がガラリと変わる、そんな水着姿だ。


:まっ!?


:ドスケベ! ドスケベだぁ!!


:凪ママ神すぎんか!? この衣装はやべぇ!! ¥500


:ああ、地獄の配信を耐え抜いてよかった。神様仏様アヤカ様ァァァァァ!!!


:これは惚れる


:ポニーテールになっちょるやん! てか相変わらずいいおっぺぇしとる!!


:ドスケベが産んだ奇跡


『ふふんっ。どう? みんなアヤカに見惚れちゃったかな?』


『へへっ、いいドスケベしてやがるぜ。流石は私の娘だ……』


『えへへぇ〜ママ、ずっと私のこと水着にしたがってたもんね。こんなに可愛い姿にしてくれてありがと〜!!』


『おう、いいってことよ。きっとしばらくの間TLはアヤカのゲフンゲフンな絵で溢れるだろうし、これで私も色々と助かる。ふふふふふ、生産性の塊ィ……』


『せ、生産性? ゲフンゲフン? なんかよく分からないけど、とにかく可愛いよねこの衣装! 髪の毛も纏めて後ろで一つに結んでみたんだ〜。より涼しさが増すでしょ!』


 コメント欄が活気で高速移動していく。


 この発表は、一切事前告知の無かったもの。今、彼女の新衣装を見れているのは地獄のゲーム配信を最後までちゃんと見届けた、猛者だけなのである。当然盛り上がる。


 アヤカも、夕凪も。全員がテンション最高潮。ハッシュタグで呟かれたTLにもこのゲリラ発表は瞬く間に広がっていき、同接者はうなぎ登りで増えていった。


『特にこの紐の部分の小さな色のウェーブとか、あっ! あとはここの細部のこだわりとか……』


『ふふふっ、アヤカも気に入ってくれたようで何より』


『うんっ! 本当にあり────』


 プツンッ。


:あ


:一、時間……


 だが配信枠の時間のことも、無視して。水着のこだわりポイントなんかを説明しているうちに、やがて配信は自動的に終わりを迎えた。


 いつも通りのエンディングも、お別れの挨拶も。何もできないまま、もはや本人に関しては一分ほど配信が切れていることにも気づかず喋り続けて。取り残されたリスナーは、喜び、驚きからの困惑を味わうこととなる。


:安定のポンコツで草


:舞い上がっちゃってたんだねぇ……


:まだ気づかずに裏で話してたりしてw


:朗報。俺たちのアヤカ、平常運転


:天性のポンコツ。ドスケベでメスでポンコツ。うん? ああ、なんだただの最高か。




 最後の最後で詰めの甘いアヤカであった。

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