第149話 アヤ凪コラボ配信1

149話 アヤ凪コラボ配信1



『ざわ、ざわざわざわ。ざわっ』


 緩い声質の、謎の効果音が響く。それと同時に真っ暗だった画面は映し出され、二人の美少女が顔を見せた。


『みんな、こんアヤカ〜! 柊アヤカで〜す!』


『どうもぉ〜。娘のスク水姿を世に晒して泣かせたイラストレーター、夕凪で〜す。めちゃくちゃ不名誉な呼び名で〜す』


:不名誉も何も事実で草w


:字面だけ見るとヤベエなwww


:いや、字面だけじゃなくてこの母親は本当にヤバい。モンスターズペアレンツステークス出走ッ!


『はぁ。オイお前らいい加減にしろよ? 人が黙って聞いてりゃやれ「精神的DV常習犯」だの「娘を脱がせて稼ぐ女」だの。視聴者だからって安全圏にいると思うなよ? 私にかかれば五分で全員同人誌に────』


『お、落ち着いてママ!? ねぇ口悪いよ!?』


『クックック。コココ、キキキッッ!! 制裁ッ! 制裁ッッ!!』


『ねぇまさかカ◯ジ読んだ!? 完全に影響受けてるよね!?』


:某会長の笑い方やんけ


:カ行で笑うのは暴君の証 ¥500


:黒服もびっくりの美人会長ww


『いやぁ、面白くて一気読みしちゃったよね。パチンコ行きたくなったよ』


『よくあの金で殴る攻防戦を見た後にそんなことが言えるよ……。普通行きたくなくなると思うけどなぁ』


『あ、違うよ? 私が打ちたいんじゃなくて。「どうしてだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」って叫んでる人、生で見たい」


『そんな人に近づかないで……本当に何しでかすか分からない狂人しか使わない台詞なんだよそれは……』


 性格の悪い事を言いながらニチャリと笑う夕凪に、アヤカはため息を吐く。


 お互いにリアルでは会ったことのない二人。今もやり取りは通話を繋ぐことによって行なっている訳だが、猛烈に彼女のことが心配になった。


 だがそれ以上の言及はせず、早速本日の本題に入っていく。


『まあ今日は、とりあえず告知通りこのゲームをやるよ〜。「ハイパーバニーウーマン」っていう、トチ狂ったうさぎ協力ゲームで〜す!』


『いや〜ん。トチ狂ったゲームなんてお嬢様の私には出来ませんわ〜』


『ママはどっちかって言うとヤンキーだから安心してねぇ。お嬢様とは程遠いですわよ〜』


:おハーブ生えますわ〜 ¥200


:アヤカちゃんもお嬢様じゃなくってよ〜


:なんだこのもう既にイカれ臭が漂い始めてる配信は(真顔)


:イカれてる奴にイカれた協力ゲーム? アヤカちゃん生きて帰れるのか?ww


 ハイパーバニーウーマン。ピンク色と青色の二匹のウサギを各一人ずつがプレイヤーとなり、計二人で操るゲームである。


 基本的なルールとしては落とし穴や谷などに落ちないようにしつつ、かつフィールドに落ちているニンジンを持って必ず二人でゴールまで辿り着かなければならないというもの。どちらか一人が脱落したりニンジンを落としてしまうとゲームオーバー。もう一人のプレイヤーが自害することでスタート地点へと二人で戻り、初めからやり直す事となる。


 まさに完全な協力ゲーム。ある程度のゲームスキルを持ちつつ、かつチームワークをふんだんに発揮しなければクリアすることは叶わない。そんなゲームを今、ゲーム力皆無な女とナチュラルイカれ女の二人が協力してプレイしているのである。


 一言で言おう。無謀だ。


『基本的なルールはやりながら覚えて行こっ! さ、ママ! 出発!!』


『あーいっ』



 だが不安など一切持たず、心の底からクリア出来ると信じきっているアヤカの明るい掛け声で、手早くゲームはスタートされた。

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