第148話 夕凪、お絵描き配信

148話 夕凪、お絵描き配信



『は〜いぃ。お前らこんばんはぁ。Vtuber兼絵描きの夕凪だぞ〜』


:こんなぎー!


:キチャッ


:・:*+.\(( °ω° ))/.:+


 緩い声色で挨拶をしたのは、「夕凪」と呼ばれる緑髪を靡かせた女の子。若干幼い容姿が愛らしい、柊アヤカを産んだ存在である。


 そんな彼女が今宵行うのは、お絵描き配信。描く内容はまだアヤカ本人にも存在しか知らせていない、水着イラストである。


『今日は言ってた通り私の娘の服を剥いで水着にするよぉ。まあ、と言ってももうモデレートとか全部完成したからマジでただのお絵描きなんだけど。公式な新衣装発表はまた後日あるからな〜』


:まっ!? 誕生日配信で言ってたやつか!!


:水着アヤカ……ワクワク、ドキドキ!( ・∇・)


:流石この人はいつも俺達の願いを叶えてくれる。勿論スク水ですよね?


:ママー! しゅきー!!


:ワッショイ!ワッショイ!!\\\\٩( 'ω' )و ////


『はいはい、落ち着け変態共。なんかスク水とか訳の分からんこと言っとるやつおったけど、そんなわけないでしょぉ? そんなの使えるわけないじゃんっ』


 はぁ、と呆れるようにため息を吐きながら呟く。


 しかし下げて上げるのが上手いこの女。一度下げた頭を上げると、にぃっと口角を上げて言った。


『スク水は、イラストだけに留めておかないとなぁ? 新衣装に使えないとは言ったが描かないとは一言も言ってないよなぁ!!』


 ででどんっ、とSEを鳴らしながら、大きな文字の画像を展開する。そこに書かれていたのは可愛くラミネートされた「娘のエロい(全年齢範囲で)絵を書こう!」の文字。


:ふぁっ!?


:スク水、キチャァァァァァァ!!!!!


:興奮! 奮起! 大喝采ッ!!


 そう。この配信枠は元々これをするために取られたものなのである。


 アヤカの公式衣装として用意した水着とは別に、夕凪自身の欲望を曝け出したスク水アヤカを降臨させるための儀式。しかもニッチなのがただのスク水ではなく、旧式の上下が分かれているタイプなところ。


 この女、変態であった。


『リスナーの欲しいものを与える。それがVtuberってお仕事だからな! お前ら刮目してとくと見よ!! 私の娘が、恥ずかしがりながら旧スク水を着て外に放り出されるという最高の絵が誕生する瞬間を!!!』


:アンタ、最高だよ ¥200


:Are you GOD!? Yes! You are GOD!! LEGEND has come!! Yeaaaaahhh!!! ¥10000


柊アヤカ:待ってママ! ステイ! お願いだからやめてぇぇぇぇぇ!!


『へへっ、へへへっ。やっぱりアヤカは恥ずかしがってるところが一番可愛いよねぇ……あ、ここは食い込みを……おへそも浮き立たせて……っ!!』


 日本人だけでなく、世界も大興奮必至のスク水イラスト執筆配信。一度沸いた熱はたとえアヤカ本人がどれだけ懇願しようと冷めることはなく。同接者三万人越えを達成した中で完成されたスク水イラストは、その日のVtuberトレンド堂々の一位を飾ることでTLに数日間流れ続け、世の男どもを魅了した。


 ジャパニーズヘンタイの文化は凄まじいもので、夕凪には絶賛の嵐。絵描き界隈切ってのインフルエンサーは、その話題性をさらに増幅させていく。



 そんな彼女とアヤカ。母娘コラボで行う新衣装お披露目配信は、もう間も無くである。

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