第129話 二人きりの海水浴2
129話 二人きりの海水浴2
「ん、冷たい……」
ぴちょっ。クリームに染まり少し白くなった俺の手のひらが、サキの背中を撫でる。
肩甲骨や背骨がほんの少し出ていて、ほくろもシミも何もない、赤ちゃんのようにすべすべな肌。そんな狭い背中の真ん中から四方八方に。ゆっくりとクリームを伸ばしていく。
「和人の、手……背中でじんわり広がって、気持ちいいよぉ」
「ほ、ほんとか? ならよかった」
気持ちいいよぉじゃないんだが。何無防備になでなでされながらほんのり顔してるんですかサキさん。
ふにゃふにゃと力の抜けているその身体は、本当に全身隙だらけである。胸元に至ってはビキニの紐が外れていることで、横からはみ出たたわわが背中側からでもチラリと覗いている。
「っ、ひゃ。んんっ……」
一緒にお風呂に入る時、バスタオル越しに無防備な姿をいつも見ているはずなのに。なんだろう、この背徳感は。テントのチャックを開けてしまえば周りから見えるというギリギリの位置にいることも原因なのかもしれないが、それにしても動悸が止まらない。
いつも思うが、サキは自分の魅力を過小評価しすぎている。少なくとも今まで生きてきた俺の二十年の人生の中で、彼女を超える美少女には出会ったことがないと断言できるほどに最高の可愛さをしているのに。そんな人がこんなに無防備に……もう、犯罪だ。
「……んひゃんっ。か、和人……そこ、ダメ……」
「えっ!? あ、あぁすまん!」
ピクッ。背中からゆっくりと伸ばし、脇腹に俺の手が到達した瞬間。サキは少し身体を動かして、可愛く反応する。
くすぐったかったのか。全身よわよわで弱点まみれのサキさんだが、新たな弱点発見かもしれない。
「お腹、触っちゃやだ。最近私、少し太ったから……」
「へ? いやいやそんな事ないだろ。サキのお腹周りは相当細いぞ?」
「お、男の子考える細さと女の子が考える細さは違うんだよ!」
いやいや、全人類共通な考え方をしてもこれは流石に細いと思うんだけどなぁ。しかもサキの場合、胸元にご立派様をお持ちなのにだ。
お腹周りが細くて胸もあまり大きくない、なんて人は結構いると思うのだけれど、コイツみたいにちゃんと大きくて細い子はそうそういないと思う。お腹周りにはうっすら、ほんの少しだけれど縦線が入っているし、おへそも縦向き。正直なところもう少し太ってもいいと思う。それでやっと標準体型だ。
「大体、原因は和人なんだからね。和人が、私を甘やかすからっ」
「ああん? 大好きな女の子を甘やかして何が悪いんだ。美味しいものを食べてる時のサキがどれだけ可愛いか、知らないだろ」
「つぅっ。もぅ……」
ぷいっ、とそっぽを向いてしまったサキの顔は、ほんのりと赤い。どうやら照れてしまったようだ。
「と、というかサキさん。そろそろ日焼け止め塗り終わったから、あとは自分でしてもらっていいか?」
「……えっ?」
さて。なんやかんやと話しながら俺はあまり意識しないように無防備な背中をぬりぬりしていたわけだが、今ようやくそれが終わった。
背中前面に丁寧に塗りたくられた日焼け止めは、白いところを残す事なくしっかりと伸びている。もう、俺の役目は終わりだ。
「んむ……和人の手でされるの、気持ちよかったのになぁ」
「え? 今何か言ったか?」
「ほへっ!? う、ううんなんでも!! ありがと、和人!!」
何かを小さな声で呟いたサキだったが、その声はよく聞き取れなかった。
急に慌てた様子であたふたとしているサキに言われ、水着を着直している間俺は反対側を向く。
平静を保っているよう振る舞っていたが……実はというと、かなり危なかった。脇腹を触った時の反応に理性が飛びかけた。もう少しで、たわわにまで手を伸ばしてしまうところだった。
触ったことが無いわけではないが、あれはサキが泥酔していた時のこと。こんな平常時に触ったら何を言われていたか。
「ねぇ、和人」
「なんだ?」
「……ちょっとだけ、いぃ?」
「? 何がだ?」
「ごめん……」
そんな、綱渡りをしていた俺の精神がようやく安らぎを得たその時。俺を背後から襲ったのは、紛れもない。谷底へと理性を引き摺り下ろそうとしていた張本人である、サキの……たわわな、胸の感触であった。
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