第124話 サキさん弄り
124話 サキさん弄り
それから、一時間ほどが経過した。
今ではすっかりサキの酔いも寝ぼけも無くなり、ようやく普通に戻っている。
「朝早いからかもしれないけど、少しだけ冷えるね。やっぱり布団が一番っ」
「何をミノムシみたいになってるんだ。布団にくるまったまま朝ごはん食べるつもりか?」
「う゛ー……」
さっきまで使っていた布団とはまた別の、少し厚めの布団。寝起きなこともあってまだ肌寒い部屋の中で、サキはそれにくるまってほにょほにょとした顔で暖をとっていた。
実を言うと俺も少し寒いし、布団の恩恵にあやかりたいものだが。もう一回布団の中に戻ってしまえばもうなどと出てこれない気がする。
「ったく……。そろそろアカネさんの部屋行かなきゃなんだから、時間になったらちゃんと出てこいよ?」
「えへへ、和人さん優しいっ。なんだかんだ言って許してくれるんだぁ」
「ふん、俺は紳士だからな」
「紳士? ……ぷふっ」
「あ、笑いやがったな!?」
サキの顔に現れたのは、嘲笑の表情。ケラケラと笑うわけでもなく、微笑むわけでもない。絶妙に腹の立つ憎たらしい顔だ。
「だって、変態さんの和人が紳士なわけないじゃん。むっつりなくせにっ」
「むっつりはどっちだ!? 大体俺が紳士じゃなかったら昨日、俺はお前を────あっ」
「……あっ」
かあぁ、と静かにサキの顔が赤に染まっていく。咄嗟に口走ってしまった言葉だったが、これで赤面すると言うことはもしかして……
「サキ、昨日のこと……覚えてるのか?」
「っぅ……ぁうっ」
すすすすすっ。布団の殻の中に、サキは静かに収納されて消えていった。どうやら昨日お風呂場で俺にしたことは記憶にあるようだ。前の時は酔いが深くて完全に記憶が飛んでたみたいだが、甘酒のみの甘酔いであればその限りではないらしい。
脱衣所で服を脱ぐときや濡れた身体を拭くとき俺に裸の一部を見せてしまったことや、入浴中俺に迫ってキスをしたこと。確かにそれらの記憶がキチンとあるのならば、恥ずかしくて当然だろう。
そしてそれをネタに仕返しを図るのも、これまた当然の流れだ。
「おいおいおい、本当のむっつりはどっちだったのかなぁ? お酒で本性を露わにしてベタベタ引っ付いてきたり積極的に迫ってきたのはさぁ?」
サキを包んでいる布団をツンツンしながら、顔を隠すサキを追い詰める。布団の内側から小さな呻き声のようなものが聞こえるが気にしない。散々誘惑されて我慢を強いられたのだ。まだまだこんなもんで足りるわけがないだろう。
「なあ、隠れてないで出てこいよぉ〜。隠れスケベのサキさんや〜い」
「す、スケベじゃなぃ……もん……。私、エッチな子じゃ……ないもんっ……」
「毎日キスしないと寂しくて心がキューってなるんだろぉ? バスタオル一枚の姿でそんなこという子が、本当にスケベじゃないのかねぇ〜」
「っうぅ〜〜っっ!!」
ぷるぷると身を震わせ、隙間から黒い髪だけを覗かせるサキ。その隙間をそっと手で開いてやると、布団でただでさえ身体を隠していると言うのにその中で更に顔を両手で覆い、小さく縮こまっていた。
(ああ、これが優越感というやつか。サキを弄るのは……なんて気持ちいいんだ!)
普段負けっぱなしだからこその反動もあってか。俺の言葉で恥ずかしがり、どんどん小さくなっていくサキが可愛くて仕方がない。
「和人……いじわる……嫌いぃ……」
「昨日はあんなに好きって言ってくれたじゃないかぁ。それにほら、今日も。寝ぼけて俺の布団に潜り込んできて、好きって言いながら匂いを嗅いでキスまで────」
「う゛う゛ぅ……! 普段は優しいのに、何でこんな時だけぇ……」
「ふふふふふ、さあサキさん、出ておいでぇ? お兄さんといっぱい思い出を語り合おうじゃないか( ^ω^ )」
それから、アカネさんと約束していた朝八時まで。俺はみっちりねっとりと仕返しを繰り返したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます