第116話 アヤ羽晩酌配信3

116話 アヤ羽晩酌配信3



@アヤカちゃん、いつも配信見させてもらってます。ちょっとポンコツだけどそんなところも可愛くて、普段から元気をもらえて普段の仕事もおかげさまで頑張れています。


さて、ところで提案なのですが。結婚しませんか?


『やだぁ〜!』


@アカネ君。君は少々女絡みが多い気がするな。ミーちゃんかアヤカちゃん、どっちが本命なのか素直に答えるんだ!!


『どっちも本命じゃい!!』


:エクレア高速ノック始まった???


:あぁ、ついにアカネさんにまでお酒が回ってしまった……


:酒池肉林パーリナィッ!!\\\\٩( 'ω' )و ////


:どっちも本命、それすなわち3ピ……(殴


 日本酒が身体を巡り始め、段々と普段の凛としたイケボ生成機なアカネさんの口調が、崩れていく。俺もたまに配信を覗きに行っていてそれがキャラ崩壊というほどではなく日常茶飯事なのは知っているが、それでもヒヤヒヤして仕方ない。


 ふざけの度が越したり、ぽろっと個人情報を口走ったり。そういった所謂″放送事故″というやつが平気で起こってしまいそうなのだ。実際隣ではミーさんが、いつもより真剣な表情でいつでも飛び出せるように準備をしていた。


『えへへへへぇ〜、アカネさぁん。お酒飲みながら配信するの楽しいれすねぇ〜♪』


『そうらねアヤカちゃん! まだ配信枠は二十分くらいあるしぃ〜、まだまだ楽しもぉ〜!!』


@お二人の初恋話を聞きたいです!


『初恋ぃ〜? んもぅ、仕方ないにゃぁ〜、特別だよぉ?』


 おっと、これはまずいかもしれない。アカネさんがどんな話をするかは分からないが、問題はアヤカだ。アヤカは昔、恋人を作ったのは俺が初めてで、それまで人を好きになったことがないと言っていた。


 となると必然的に今が初恋の真っ最中だという話になってしまうかもしれない。俺個人としては録音して聞きたいところだが、彼氏がいるというのはVtuberをやっていくにおいてプラス要素になるとは思えない。もしもの時は口を塞いででも止める準備をしておかないとな。


 って……アヤカのことばかり考えていたけど。そういえばアカネさん、初恋の人なんているのか?


『ふふんっ。私の好きになった人はねぇ、とっても可愛いの! まじめでぇ、優秀でぇ。でもたまに抜けてるところがあって……襲っちゃいたくなるくらい、ほんっとうに可愛いんだにゃぁ!!』


:襲っ……?


:あれ? なんか相手男って感じしない言い方だな?(゜∀゜)


:情報量がw情報量があまりにも少なすぎるww


:アカネさんに可愛いって言ってもらえるとか、めっちゃ羨ましい(・∀・)


『アカネしゃん? アヤカにだけでいいから、こっそりその人が誰なのか教えてくだしゃいよぉ〜。そんな言い方じゃ全然どんな人か分かんないですぅ〜』


『ふふふふふっ、な〜いしょっ』


『ぶぅぅ……』


 まじめ? 優秀? 可愛い? え、違うのか? これって俺の隣で顔を真っ赤にしてフリーズしてる、この人のこと言ってるんじゃないのか?


 いや、でもアカネさんのことだし……恋愛感情、っていうよりサキに向けてるみたいな、可愛い! 好き! みたいな軽いやつなのだろうか。襲っちゃいそうっていうのは……多分そういうことだろう。


 ま、まあ深く考えちゃダメだな。うん。


『さて、そんなことよりアヤカちゃんも初恋の人の話をするのだ! さぁ! さぁっ!!』


『えぇ〜? ん〜……まあ、どうしてもっていうなら、仕方ないれすねぇ……』


 っと、まずい。それよりも問題児がまだ残ってるんだった。なんならもう今から部屋の襖の前まで移動しておいて、すぐに口を塞げるように────


『私が初めて好きになった人は、その……とってもかっこいい、人でしたよ?』


 ふぇっ……?


『ちょっと不器用なんですけど、たまに男らしくて。あと、優しいんです。私みたいなドンくさい子にも、寄り添ってくれて……って、んにゃぁ!? アカネさん何ニヤニヤしてるんれすか!!』


『う〜んにゃぁ? ふふっ。久しぶりに、女の子なアヤカちゃんが間近で見れて嬉しくてぇ♪』


『う〝ぅ……話さなきゃよかったれす……』


:メスアヤカ、降臨!!


:なんだかめちゃくちゃ乙女チックな初恋で胸焼けが……。この尊さ、おじさんには耐えきれないッッ!


:メッスアヤカっ♪(v^_^)vメッスアヤカっv(^_^v)♪


:アカネさんの男の子相手か女の子相手かも分からないふわふわした感じの初恋話も良かったけど……アヤカちゃんの初恋、なんか世界観が違うんだが!? 二次元の住人かな!?!?




 ミーさん、顔真っ赤にしてるの見てちょっと笑いそうになっちゃってごめんなさい。俺も今、顔が沸騰したみたいに熱いです……。

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