第114話 アヤ羽晩酌配信1

114話 アヤ羽晩酌配信1



『あ〜……あ〜……これ、みんな聞こえてるのかな? 聞こえてたらリアクションくださ〜い』


:#アカネの初プレイス雑談 d( ̄  ̄)


:#アカネの初プレイス雑談 聞こえてるよー!


『おっ、大丈夫そうだね。反応書き込んでくれた人、ありがと〜』


 プレイス配信では、普段の配信とは違う点が大きいところで言うと二つある。


 まず一つ目は、コメント欄が存在しないということ。そのためリスナーとの意思疎通は、ハッシュタグをつけた書き込みを見ることで行われる。


 二つ目は、画面の有無。ゲーム画面とVtuberとしての顔を写したりしながら配信するのがいつもの光景だが、このプレイスでは画面の移り変わりは存在しない。そのため、声だけでの、いわばラジオのような感覚での配信だ。


 ゲリラでの急な配信ということに加えて、いつもとは違う形式。いつもより同接数なんかはかなり減りそうなものだが、意外にもその数の減少は少ない。ここはやはり、流石アカネさんと言ったところか。


「アカネさんはひとまず大丈夫そうですね。あとは、サキさんですが……」


「信じるしかないですね。アイツのポンコツぶりが発揮されないことを」


 ちなみに俺は今、俺とサキが泊まっていた部屋から隣の部屋で行われている配信をスマホで聴いている。もし何か問題が起こった時はすぐに飛んでいける位置だ。


『みんな、こんばんは。赤く煌めく劣等星、赤羽アカネです。今日は突然の配信になっちゃってごめんね〜』


:♪───O(≧∇≦)O────♪キター!


:待ってました!!


:あ、いつもと声の感じちょっと違う!


:マイク無しのスマホから直接声流してる感じかな?


『お、そんなに違う? そうだよ〜。これ今ワイヤレスのイヤホンつけて直接喋ってま〜す。ふふっ、意外と好評みたいで嬉しいよ』


 お馴染みのイケボでリスナーを心酔させながら、やったりとした口調でアカネさんは導入を終え、本題へと入る。


『さて、そろそろ始めていこうか。記念すべき一回目、初プレイス配信の内容は晩酌配信。実はプレイスを使っているのには理由があってね。なんと……私は今、温泉旅行に来ているんだ!』


:温泉!? ガタッ(((o(*゜▽゜*)o)))


:もしかして……ミーちゃんと二人で旅行ですか!?


:マネージャーとVtuber。二人きりの温泉旅行で、何も起こらないはずもなく……


:浴衣のアカネさん……。想像しただけで鼻血がッッ


『あはは、勿論ミーちゃんも来てるよ。でももう一人、みんなが知ってるあの人が来てるんだよねぇ』


 その言葉とともに、プレイスのリスナーの一人として紛れ込む一つのアカウント。誰もスピーカー申請しない中その一人だけが申請をし、数多くのアカウトがアカネさんのアイコンの下に表示されている中、一番上へと上昇する。


『それではお呼びしましょう。私が愛してやまないVtuber、柊アヤカちゃんです!!』


『……』


『あれ? アカネちゃん? おーい……』


『う〜? あぅ……』


 スピーカー申請が通り、マイクをオンにしたもう一人のVtuber。その第一声は、寝起きのようなふにゃふにゃの言葉にならない鳴き声。


────どうやら俺の心配は、的中してしまったらしい。


『うぁ〜う! こんあやかぁ〜。柊アヤカれぇ〜〜〜す!!』


:うぁ〜うwww


:アヤ羽キチャァァァァ!!!


:#アヤ羽晩酌配信プレイス アヤカちゃんだ!? そしてタイトル変わってる!!!


:滑舌よわよわで草ぁw


:あれ、もしかしてもう酔ってる?ww


『酔ってないれすよぉ〜。みんな、今日はアヤカと呑み明かそう! お酒お酒お酒ぇぇ〜!!』


『聞いて驚かないでね。なんとアヤカちゃんが今こうなるまでに呑んだお酒の量……甘酒一杯です』


『いぇぇぇええい!!』


 一度配信を始める前に試飲をする予定だったのだが、思っていたよりも押していた時間。それによりぶっつけ本番でこのプレイス配信を迎えてしまったわけだが……その結果は、ご覧の通りである。


 ちょろ酔いのように昏倒はしなかったようだが、声を聞いていれば明らかに酔っていることは分かる。


(本当にこれ、大丈夫なのか……?)


 いつ暴走してもおかしくないアヤカと、相乗効果で暴れそうな狂戦士バーサーカーアカネさん。





 混ぜるな危険状態の二人のコラボ配信の火蓋が今、切って落とされた。

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