第103話 ドクターフィッシュと響く嬌声

103話 ドクターフィッシュと響く嬌声



「あっ、んぁ!? っぅ……いっ!?」


「はぁ、はぁっ……いいよぉサキちゃん。ふへへへへへっ……」


 広い個室。その中央の大きな湯溜まりに足をつける四人。


 一人はドクターフィッシュに群がられ、とても人前では聞かせられないような声をあげて。もう一人はそれを見て、ある意味人前には絶対に出してはいけないレベルの変質者になって。残りの二人は……ため息混じりに、それを眺めていた。


「なん、れ私のところばっかり……。んあっ、しょここしょばぃ……!」


「ミーさん、ドクターフィッシュってオスしかいないんですか?」


「そんなわけないでしょう……と言いたいところですけど、私もそう思うようになってきてます。横の変態おじさんも魚同様、はぁはぁ言いながらサキさんを襲わんばかりの勢いですし」


 本当にここが屋外じゃなくてよかった。サキのえちちな嬌声を聞けてピクピクと我慢しながらも身体を小さく震わせている光景も見れて。とても目と耳の保養になるが、彼氏としてこの姿を群衆に晒すのは抵抗感がある。


「……和人さん? なんですかそのスマホは」


「えっ?」


 おっとしまった。つい無意識にサキの痴態をカメラに収めようとしてしまっていた。俺もアカネさんのことを言えないな。男の性、恐るべし。


「サキちゃぁん、可愛いよぉ……ふひっ、ふひひっ、あへへへへっ!!」


 いや、やっぱりあれと一緒は嫌だな。なんだあれ外で同じことやってたら絶対捕まるぞ。通報されて強制連行からそのまま逮捕までスムーズに事が進みそうなほどに見事な変質者っぷりだ。


「? アカネさん、そのペンは何ですか?」


 スッ、とサキの近くまで差し出していた、アカネさんの手に握られたペンを見てミーさんが問いかける。


「え? ペン型の録音するやつだけど?」


「ナチュラルにサキさんの声を録音しないでください。何に使うつもりですか……」


「ナニに使うつもりだけど? そこらへんに落ちてるASMRやえちち動画より遥かにヌキ度高いよ、これは」


「「うわぁ……」」


 ある程度喘ぎ声を採取して満足したのか、アカネさんはペンについた小さなボタンを押し、録音を終了して服の中に仕舞う。そしてそれと同時にサキへのドクターなフィッシュさんたちの集中砲火がぴたりと止んで、半分くらいの数がこちらの方にも流れ始めた。


「ふぅ、はひっ……やっと、離れたぁ?」


「ありゃりゃ、サキちゃんのすべすべなお肌はもう味わい尽くしちゃったのかな?」


 未だ余韻があるのか、サキはどこか惚けている様子。そして自然な流れで今がチャンスだと忍び寄った魔の手は、ミーさんによって止められた。


 首元を引っ張られ、「きゅっ」と小動物のような声を上げながら驚くアカネさん。だがすぐにそのジト目は光りだし、反撃に出た。


「ミーちゃん、よくもやってくれたね。サキちゃんとの触れ合いを邪魔しようというのなら……ミーちゃんに代わってもらうしかないねぇ!!」


 突如、号令をかけるかのように真上に掲げられる細い腕。そしてそれを振り下ろすと同時に、アカネさんは声を上げる。


「やーっておしまいなさい、フィッシュちゃん! ミーちゃんの足をこれでもかというくらいに責め回して……んひぃっ!?」


 が、アカネさんの意思とは裏腹に、次のターゲットになったのは彼女自身であった。サキに群がっていた全勢力が次はその艶やかな脚を狙い、一斉攻撃を開始する。


「やっ、らめ……しょこ、んにゃっ! ミーちゃん、助けてぇ!!」


「ふんっ、バチが当たりましたね。ちゃんとスマホの画角に収めておいてあげますから、たっぷりと責め潰されてください」


「酷いっ!? ふ、ふんっ。なら脚をお湯から抜いちゃえば……」


「させませんよぉ」


「ぴぇっ! サキちゃん!?!?」


 ガシッ。さっきまで一人疲れ果てていたサキが突然動き出し、アカネさんの肩を掴む。決して身動きが取れぬよう……その脚を、お湯から抜けぬよう。


「らめ、これっ、ほんとに……んんっ! お義兄様、たしゅけて……こんなの、ダメだよぉ!!」


「安心してください。ちゃんと後で、グループの方に動画送っておきます」


「んにゃぁぁぁあ!!!!」



 アカネさん、天誅。

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