第73話 誕生日記念配信2

73話 誕生日記念配信2



@柊アヤカ様。もう七月に入り、本格的に夏となりました。さて、夏ということはつまり、水着の季節です。というわけで単刀直入に言います。着てください


『み、水着!? うーん……ちなみにみんなは、どんなの着て欲しいの?』


:スク水!!!!! ¥200


:黒ビキニしか勝たんッ!!


:涼しい感じの水色のビキニー!!


:柄とか色は置いといて、ビキニがいい!!!


 おーおー、男の欲望詰め合わせだなぁ。というか、一定数スク水信者がいるのヤバいだろ。アヤカのあのたわわな物がスク水着に収まるとでも? 仮に収まったとしても、きっと犯罪的な格好になるのは間違いなしだ。


 あ、ちなみに俺はノーコメントで。ただ、アヤカにじゃなくサキに着てもらうなら、そうだな……うん。白ビキニで!!


『へぇ、みんなビキニ着て欲しいんだ。ま、絶対に着ないけどね〜』


:な、そんな殺生な!!


:着てくれよぉぉぉ!!!!! ¥1000


:誠意製作中。しばし待て


『!!? ちょ、ママ今製作中って言わなかった!? アヤカそんなの聞いてないんだけど!!!』


:なぎママー!!!


:流石すぎます! 期待してますよ!!!


:さすが俺たちのママ! ママぁーーっっ!!!


:いや、お前らのママではないが? 落ち着け変態ども


 Vtuberには、誰しも「ママ」と呼ぶべき人が存在する。


 それはズバリ、自らの身体を製作してくれた絵師の人だ。アヤカの場合、その人とは「夕凪」という方のことである。


 アヤカのママになる以前から絵師として人気のある人で、アヤカの後を追ってつい最近自らもVtuberとなった夕凪さんは、今ではVtuberと絵師を両立して活動を行っている。


 そんな彼女の呼び名は、通称なぎママ。そのロリ的な姿と声の彼女に「ママー!」とか「ばぶばぶー!」とコメントを殺到させるファンたちの有り様は狂気のそれであるが、今ではそれに対して「お前らのママではない」と夕凪さんが返す一連の流れが定着した。


 だが、彼女自信「なぎママ」という呼ばれ方自体には不満はないようで。ファンが暴走していない時は、おっとりとした口調でのんびりと配信を行っている、そんな人だ。


『むぅ。ママがアヤカに黙ってこっそり作ってる水着姿とか怖いんだけど……。ま、まあとりあえず置いておいて、次に行こう』


@アヤカちゃんの公式設定は十八歳ですが、つい先程二十歳であると判明しましたね。お酒の飲める年齢ですが、晩酌配信とかしないんですか?


『えっ……あ。そ、そうだね私十八歳の二十歳だからお酒は飲めるねー! でも、晩酌配信かぁ。実はまだ飲めるようになったばかりでちゃんと飲んだことがないから、ちょっとできるかは分かんないなぁ……』


:十八歳の二十歳草www


:そーいえばさっきそんなこと言ってたなwナチュラルに言ってたから気づかんかったww


:アヤカちゃん絶対お酒弱い……( ^ω^ )


『晩酌配信……一人でやるのは不安だから、誰かとコラボでとかならありかも! ……って、アヤカがコラボできそうな人ってママかアカネさんのどっちかしかいないね。ママとはまだ初コラボも出来てないし、やるならアカネさんとかな!』




 と、アヤカがそう言ったその瞬間。配信に、スマホの着信音が鳴り響いた。

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