第72話 誕生日記念配信1

72話 誕生日記念配信1



『みんな〜、こんあやか〜! 今日が誕生日の柊アヤカだよ〜!!』


:キター!!(*≧∀≦*) ¥250


:おめでとー!! ¥200


 七月八日、夜。本来の誕生日とは一日遅れで、アヤカの誕生日記念配信が始まった。


 ちなみに、一日配信日が遅れた本当の理由は当然リスナーには公開していない。彼氏と一日中一緒にいたかったからなんて言ったら、ガチ恋勢は卒倒ものだからな。


 と、いうわけで。理由は『親と一緒に過ごすから』になった。まあこれが一番無難だし、アヤカらしくもある。


『いやぁ、本当にごめんね? 誕生日は昨日だったんだけど、パパとママとの誕生日パーティーを断る訳にはいかなくて。配信してることも伝えてないから、パーティー断って部屋に引きこもっちゃうと反抗期みたいになっちゃうんだよぉ〜』


:構わんよ( ^ω^ )


:可愛いから……ヨシ!


:家族とパーティーとか子供っぽくて好きw ¥500


『ちょっ、家族とパーティーするのが子供っぽいって言った人いたよね今!? 全然そんなことないでしょ!! 二十歳でもみんな普通にやるよね!?』


:……やらない、かな


:一人暮らしだから、特に何もせずにポテチ食べてた


:友達とオールでカラオケぇ


:二十歳になっても両親と仲良いの、しゅごい


:アヤカちゃんの両親ってどんな人なのー? ¥1000


『ん? パパとママがどんな人か、かぁ……うーん……』


 お、そういえばその話は俺も聞いたことないな。以前引越しの作業を手伝った時に挨拶を、なんて思ってたんだが、ちょうどその時は親御さんいなかったし。何より、何故か俺に会わせようとしてくれない。


『パパはちょっと、怖めかも。アヤカには甘いんだけど、逆に甘すぎるっていうか、ね。過保護すぎて、周りが見えてない時があって違う意味で怖い……』


:そりゃあこんな可愛い娘がいたら、ねぇ?( ̄∀ ̄)


:過保護なのかwww


:愛されてる証拠だよ! ¥500


:彼氏とか連れてきたらどつき回しそうだねw ¥1000


「ど、どつき回し!?」


 ま、まさか俺が会わせてもらえなかった理由ってそれなのか!? どつかれるだけでも嫌なのに、その上回されるのか俺!?


 よくラブコメとかでヒロインのお父さんが怖い……みたいなのはよくあるテンプレ展開ではあるものの、まさかそれを俺自身がくらうことになるかもしれないとは思ってもいなかった。そのうちこの家にも乗り込んできたりしないよな? しないでくれよ? いや、マジで。


『あ、でもママはまともな人だよ〜! 優しくて、私の気持ちちゃんと分かってくれて、パパが暴走しても止めてくれてる!!』


 ああ、お義母様。良かった片方は正常なんだな。それならまだ、その背中に隠れていればなんとかなりそうだ。ひとまず、少し安心────


『まあ、お酒飲んじゃうと凄いことになっちゃうんだけどね〜。アヤカはママがお酒に手をかけた瞬間、リビングから退散してパパを生贄にしてる!』


 できない! 安心できないぞこれ!! 今凄く物騒なこと言ったな!! なんだ生贄って!?


:ああ、お母さん本気出したらヤバい感じの人なのか……


:……スゥッ


:( ・∇・)


:なんか、うん。楽しそうな家庭だなぁ。


 そのうち、俺も生贄として捧げられたりするのだろうか。お義父様がいるうちは身代わり人形として奉れるかもしれないが、もし何かの席で俺以外に捧げる者がいなくなってしまったら……ひぃ。


 と、俺が一人リビングで怯えていることも知らず、アヤカはテンション高めで楽しそうに、話を進めていく。




『……さぁて、前座はこれくらいにして、そろそろエクレア読んでいくよ〜! さっき見たら件数が三桁後半になっててもう配信内で全部は無理かもしれないけど、ちゃんと裏で全部目を通してるから安心してね! では、いこうっ!!』

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