第74話 誕生日記念配信3
74話 誕生日記念配信3
『アヤカちゃん今の話は本当かい!? いつだ! いつ一緒に晩酌配信をしてくれるんだ!?』
『ちょ、落ち着いてくださいよアカネさん!! どうしたんですか!?』
電話の主は当然、アカネさんである。きっとこの配信を見ていて、さっきのアヤカの発言で居ても立っても居られなくなって電話してきたのだろう。
『……っと、すまない取り乱した。みんな、こんアカネ〜。赤羽アヤカです。よし、挨拶は済んだな! さあさっきの話の続きを!!』
:アカネさんめちゃくちゃ必死で草ww
:なんかもう、この間のコラボの時もそうだったけどアヤカちゃんと接してる時明らかに他の人と比べて距離感近いんよwww
:これは、またコラボが見れそうだねぇ(^ω^)
突然なアカネさんの乱入。これにはリスナーも喜んでいるようだが、俺は心配でならない。
普段、赤羽アカネというVtuberはクールキャラで配信を行なっている。この間のホラゲコラボの時はその姿勢を「アヤカを守る母性本能」によって保っていた感じがあったが、今は違う。
まるで、サキと初めて会ったあの日のようだ。このまま暴走が悪化すれば、キャラ崩壊を招きかねない。
そのことを分かっているのか、それともただの恐怖心からか。アヤカは必死に、アカネさんを宥める。
『ば、晩酌配信するって決まったわけじゃないですから! ただ、やるならアカネさんとかなって思っただけで────』
『私はいつでもOKだぞ! オフコラボでもしアヤカちゃんが酔い潰れたとしても何日間でも介抱しよう!! こんなに都合の良い女中々いないよ!?』
『都合の良い女とか人聞き悪い言い方しないでくださいよ!!』
:ああ、てぇてぇ……(*´∀`*)
:いや、これてぇてぇなのか? なんか一方的にアカネさんがジャブし続けてるだけな気が……
:都合の良い女草w
:もう早く結婚してもろて ¥500
『分かりました! やりますやりますから!! だから落ち着いてください、ね!?』
『私は至極冷静さ! 今だってほら、手元に私の大好物、レモンサワーがあるけど中身は入ってないからね!!』
『それもう飲み干してるじゃないですか!? えっ、アカネさん酔ってるんですか!?!?』
『あはははは、酔ってるわけないだろう! ……っ、おい! 何をするミーちゃん!! あ、やめっ────』
ツー……ツー……ツー……
その瞬間、アカネさんの声は完全に途絶え、配信には着信が終了した合図のその音だけが響いた。アヤカも急展開に次ぐ急展開に頭が追いついていないようで、顔を真顔で固めたまま黙りこくっている。
にしても、まさかアカネさんが既に酔っていたとは。どおりで配信と裏でキチンとウラオモテがはっきりしているあの人がここまで配送事故寸前の自体に至るわけだ。最後に一瞬名前が上がった「ミーちゃん」とは、マネージャーさんのことだろうか? それとも猫か何か……?
『え、えーっ……と……。はい、ゲストのアカネさんでしたー! いやぁ、アヤカの誕生日に凸してくれて本当に光栄だよー!!』
:凸……? 今のはどちらかというと、ただの当たり屋では……
:衝突事故起こしてますぜ、旦那
:アヤカちゃん、フォローする声震えてるww
そりゃあ、声が震えもするだろう。コメントにもあった通り、この行為は本当に当たり屋と同じだ。当たり屋凸だよ馬鹿野郎。いや、誰が上手く言えと。
まあ何はともあれ、危機は去った。アカネさんはきっと今頃もう一度電話を繋ごうと暴れているからだろうが、そこはミーちゃんって人に任せるしかない。もしその人が本当にマネージャーさんなら、アカネさんの暴走には慣れているはずだから上手く止めてくれるだろう。
『おっ、ほん。さて、まだまだ配信枠はこれからだからね! エクレア読み再開していくよっ!!』
そうしてアヤカは、咳払いをしてなんとかテンションを元に戻し、配信を再開した。
夕凪さんの水着新衣装宣言に、酔っ払いアカネさんの当たり屋凸。想定外の事故は起こったものの、相変わらず民度の高いコメント欄は特に荒れることもなく。誕生日記念配信の二時間枠はその後エクレア読みを続けて、平和に幕を閉じていったのだった。
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