第44話 収益化記念配信1

44話 収益化記念配信1



『みんな、こんあやか〜!! サムネを見てもらったら分かる通り、今日は記念枠だよぉぉぉ!!!!』


:キチャァー!!! ¥500


:おめでとォォ!!! ¥1000


:今宵は宴じゃァ!!  ¥200


『みんな、本当にありがとう。収益化が通ったのは、みんなが応援し続けてくれたからだよ! これからも応援よろしくねっっ!!』


:勿論ッ!!


:我ら一生柊親衛隊であります!! ¥2000


:さあ、スパチャ祭りが始まるぜェェ!!! ¥1500


 きっとみんな、この日を待ち侘びていたのだろう。配信が始まった瞬間、一斉にスパチャの雨が降り始めた。


 中には千円、二千円と高額なものもあり、改めてアヤカの凄さを見せつけられる。


『さて、じゃあ今日は久しぶりにエクレア読んでいこうかな!』


 エクレア。匿名で質問や応援メッセージを投げかけることができるサイトの名前で、他のVtuberなどもよくやっている、有名サイトだ。ちなみに、俺も中身がサキだと知る前は何度も色んなメッセージを送ったものだ。(相変わらず読まれたことはないが)


『なになに? えっと……』


@いつも配信見させて頂いております。アヤカちゃんの配信を見ることが生き甲斐で、ブラックな職場でも耐えることができています。これからも、頑張ってください!!


『わー、ほんと!? 嬉しい!! ブラック企業の人なんだね……名前とか書いててくれたら、応援メッセージとか言えるんだけどなぁ。匿名だからどうしよう……』


:私です ¥10000


:本当か?ww


:匿名の意味無くて草www ¥200


『あ、本人さんが赤スパ投げてくれてる! えっと、とあるサラリーマン小林さん、だね!! いつも動画見てくれてありがとう! ブラック企業は辛いかもしれないけど、いつかは必ず報われる日が来るから! アヤカもずっと応援してるから頑張ってね!!』


:ああ、もう死んでもいい…… ¥20000


:小林さん投げる金額増えてて草


:アヤカちゃんに頑張れって言ってもらえるなら、ブラック企業への就職もありかもしれないな……( ^ω^ )


:就職……ウッ、アタマガ……


:草


『さて、小林さんを救えたところで次行こう!!』


:死は救済ナリ


:小林……お前のこと、ずっと覚えてるからな(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


 小林さんの二回目の赤スパに気付かなかったのか、それとも気付いた上での受け流しなのか。アヤカは、次のエクレアを画面に表示する。


@アヤカちゃんのスリーサイズ教えてほしいナリ。教えてくれたら赤スパ投げまくるナリ。……みんなが


『ス、スリーサイズ!?』


 どうやら先に候補を絞ってからの紹介では無く、今無作為に選んであるだけらしいアヤカは、唐突な変態の登場に動揺する。きっと、このまますぐにスルーできたら楽だったろう。だが────


:任せろッ! ¥10000


:この食費でアヤカちゃんのスリーサイズを聞けるなら……本望ダッ!!!(血涙) ¥10000


:赤スパは無理だったが、助力いたすっ! ¥5000


:投げ時と聞いて ¥10000


:スゥー…… ¥20000


:初見です。投げますね ¥10000


 まさかの、赤スパ祭りである。よほどの人気Vでしか起こらないような現象が今、アヤカの非公開とされていたスリーサイズ情報を吐き出すためだけに発生していた。


『ちょっと待ってみんな落ち着いて!? 赤スパ投げすぎだって!! お金は大切にしようよォ!!!』


:おっと、手が滑って ¥20000


:わ、分かった! 大切に…… ¥15000


:アヤカちゃんのスリーサイズの情報以上に、大切なものなどないッッ!! ¥25000


 今、サキはどんな顔をしているのだろうか。動揺しすぎてちょっと半泣きになったりしていそうで、想像しただけで面白い。……って、コイツら財力どうなってるんだ? 怖い怖い怖い。


『分かった、分かったよ! 言うから!! ちゃんと言うからもう殴らないで! お願い!!!』


 そして、約一分ほどの札束ビンタが続いて。ようやくスパチャが止むと、アヤカは『ふぅ』と安堵したように息を吐いた。


『もぉ。なんでアヤカのリスナーさんはこんなに変態さんばっかりなのかなぁ……。スリーサイズ……は、流石にちょっと恥ずかしいよ。胸のサイズだけで、いい?』


:もぉ、仕方ないなぁ。さ、おじさんにお胸のサイズを教えなさい( ^ω^ )


:まあみんな一番知りたいのはそこだしな


:お尻は!? お尻のサイズはッッ!?!?


:私は一向に構わんッッッ!!!!


 一部の尻フェチを除いて、ほとんどのリスナーたちがそれでもいいと言っていたので、アヤカは渋々といった様子で、それでいて少し照れ臭そうにしながら、サイズを口にした。


『G、れす……』


 アヤカのイラストが照れ顔を表示できないのがとても残念なほどの、最高のタイミングの噛みとその後の『ぅぅ……』という漏れた羞恥の声。それには、コメント欄も────


:G、だとッッ……(吐血)


:¥10000


:神回だ!!!


:やっぱり、アヤカしか勝たん(^ω^)


:G!! Gッ!!!!!(大歓喜)


:フォウフォウフォウフォウフォウフォウフォウフォウフォウ‼︎! ¥18000


 あらら、壊れてしまった。というか、サキGもあったのか……ふぅ。助かる( ̄∀ ̄)


『もぉ! 変態さんばっかりだよ柊親衛隊は!! 変な盛り上がり方しないでよぉお!!!』



 だが、まだエクレア読みは始まったばかり。この枠は、まだまだ終わらないのである。

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