SF小噺鉛筆ロケット

「重力レンズだと?」

 はい。SFっぽい言葉でた。実際に理論は確立されているけど。

「バァカ……重力、コンタクト・レンズだっての」

 あ……斜め上、いまのぼってった。

「お前は便利なポケットを持った猫型ロボットか?」

「知らねぇよ。出来たもんはしかたねぇだろが」

 指先にのせていたコンタクト型の科学的ガジェットを男が自分の眼にはめる。そして室内を見回せば……。

「おー! 相変わらずアチコチ、割と歪んでるな」

「おい……かついでんじゃねぇよな」

 男の片目は重力、コンタクトレンズとやらのせいで金色に見える。漆黒と金色の二つの眼がニマッと笑った。

「今度、お前のコンタクトも調節してやる。眼科でコンタクト作るッてレシピを乞食してこいよ。今日は、これをつけて外出するのさ」

「羊飼いってことか」

 ここでいう羊飼いは、いわゆる保護者だ。被験者に異常があった場合、ただちに実験を中止して適切な処置を施せる存在。

 つまり、信頼している相手と言うところか。

「……わかった。どこへ行きたい?」

「なぁに、玄関から五分の駅前まで行って戻る。そんだけ」

 相手が無言でうなずくのを見て男は玄関で靴をはいた。

「!」

「おい、早く出てくれ……おいっ」

 戸を開けた男は、呆然と立ち止まっていた。

「な、なぁ…………」

「なんだよ」

「最近、この辺りに洞窟ってできたっけ?」

「えっ? それって……」

 

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