SF小噺カタパルト

「どーしたもんかなぁ……」

  窓の外の雨を眺めて青年は呟く。

「なにが?」

 盆に茶をのせて、妹は尋ねた。二人は、ワリと特殊な関係だ。

「俺くらいの年齢なら打ち上げてもいいんだよ」

「なにをさ?」

「衛星だよ! 空き缶でいいからリフトアップうちあげしたいンだ」

 えーっと、科学部の部長である青年は吼えた。

 まぁ、部の予算的に実績が欲しいのだろう。 ただし、空き缶ロケットという空き缶を打ち上げる作法は、省庁によって管理されている。届出も出さずに実行しようものなら科学者の道は閉ざされるだろう。

「……ケロシン、手にはいんねーかなぁ」

「バカなのかぁい。 時代はもうロケットじゃないって何でわかんないかなぁ兄貴」

「ロマンなんだよぅ」

 妹は、兄がバカなのは知っているし、アホなのも承知している。ただ、かわいくて仕方ないのだ。

 泥団子に夢中になり、次は昆虫だ。昆虫以外にも虫には苦労させられた。だけど最後の最後には格好いいところを見せてくれるのを知っている。

 バカ兄貴を任せられる兄をたくせる義姉をと、妹は思うのだ。

「じゃ、じゃあ……なんだって言うんだよ」

 兄が、ズズッっと茶をすする、上目遣いに、そして乞うように。

 妹は、ソレを見届けて得意げに……そして満足げに答えた。

「軌道エレベーター、コスト的にも問題ないわ」

 兄の次の言葉は、想像に易い。しかし「ワンチャンあるかな」と考えていた。



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