第21話 大句VS恵奈 変らないメンタル
そこでようやく恵奈は、ナレーションも聖域展開も終了し、自分が先行であることに気付いた。
【恵奈 聖域 黒い墓場(黒・水・緑)自分のマジシャン・デビルタイプのAPは500アップする】
【大句 聖域 侵略された文明(赤・緑)相手のカードをバトルで倒す度にドローする】
「わ、私のターンッ」
【恵奈 手札6 マナ6】
「わ、私は、カードを三枚全てセットしてターンエンドです」
レジェンズはキーカードを置くキーカードゾーンが三マス、カウンターやスキルカードを置くセットフィールドが三マスの合計六マスを使うカードゲームである。
カウンターは相手のターンにのみ発動できる使い勝手の悪いカードだが、その効果は文字通り相手の攻撃をいなし、反撃するカードであるため今の恵奈のフィールドは守りは万全であると言える。
【大句 手札6 マナ6】
「ふん、フィールド全てを使ってのカウンターセットか。そんなので俺に勝てると思うなよ!」
防御全開の恵奈を下卑た笑みを浮かべたままの大句は一気にカードを展開。それらは大句のフィールドに反映され、二体の岩で出来た巨人が姿を現した。
《岩石の巨人 AP1600SP1 コスト2 赤 バーサーカー》
「二体の岩石の巨人でコスプレ女の攻撃だッ」
大句の指示に従い岩の巨人たちは各々の体のパーツを取り恵奈に向かって投げつけた。
宙高く舞う落石に対して恵奈はカウンターを発動しようと操作するが、
「あわッ、あわわわわ…………ぎゃああああッ!!」
リアルに襲い掛かる落石を見て身が
その結果、気持ちの言い破裂音と共に恵奈のコアが岩の巨人のSPの合計分破壊される。
【恵奈 コア10→8】
「ぎゃ~はっはっはっ! やっぱり弱者を
早くも勝利を確信し高笑いをする大句。そんな大句の耳にか細い声が聞こえた。
「そんな……ことには……なりませんッ」
大句が笑うの止めて恵奈に視線を移すと、砕け散った恵奈のコアが光り輝き、ある一つの効果を発動しようとしていた。
「ギフト発動です……!『魔力抽出』。次の私のターンに初めて発動するマジックカードのコストを二つ下げます」
「ふん、つまらないことを……ターンエンドだ」
【恵奈 手札3→4 マナ6→9 コア8】
フィールドにはセットされていたカードが三枚あったために恵奈の増えたマナは三。
だが、それでも初めて発動されるマジックカードのコストが二つ下がるのは戦略の幅が広がることでもある。
それを警戒してか大句も先程まで浮かべていた笑みを引き締め、眼力を強くして恵奈の動向に目を向けた。
「わ、私はギフトの効果でコストを二つ減らして『魔術・黒焔』を発動します。このカードの効果で大句さんのフィールドのキーカードのAPを-200して0になったキーカードを破壊します」
【魔術・黒焔 黒 コスト5→3 相手フィールドのキーカード全てのAPを-2000する。(AP0になったキーカードは破壊される)】
しどろもどろになりながら発動した恵奈のカードから吹き荒れるような黒焔が岩石の巨人たちを襲う。
その黒焔は巨人たちの頑強な岩を溶かしていき、次第には凝り固まったマグマのような物体へと姿を変えた。
【岩石の巨人二体 焼却】
「や、やった! よし、この調子で……」
アナウンスが巨人の破壊を認め、意気揚々と恵奈がカードを出そうとした、その時だった。
「ふざけんじゃねぇぞ、このコスプレ糞女がッ!!」
「ひいいいぃぃぃぃぃッ!!」
自分のカードを破壊され、血管を剥き出しにした大句が汚い怒号を飛ばして恵奈はまた身を竦めてしまった。
「てめぇみたいな糞ザコは脇でコソコソとして、試験になったら俺様にやられればいいんだよ! あんまり舐めたことしてたらしばくぞコラッ!」
「す、すいません……すいません……ターンエンドです……」
肩を尖らせ息を荒くする大句の威圧に圧され恵奈はカードを手札に戻してターンを終了した。
大句からの鋭い目付きや暴力的な言葉、そして何よりも無茶苦茶な内容だったとしても勝との訓練で何か変ったかもと期待していた恵奈は自分の情けなさに遂に目元に涙を浮かべてしまう。
そんなか弱い少女を相手にしていることが幸運だと言わんばかりに大句は気味が悪いほどに釣り上がった口角を携えてカードをドローした。
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