第20話 緊張の幕開け
リングに上がった恵奈を待ち受けていたのは、最近達美の切り札を奪い勝に賭けバトルで負けた大句
その偶然に達美は驚き隣にいる勝を見る。
「先生、どういうこと何ですか! なんであんな奴が恵奈先輩の対戦相手なんですかッ?」
「ん? 駄目なのか?」
「駄目に決まってるじゃないですかッ! あいつは私のカードを奪うような最低な奴ですよッ。相手に選ぶなら私たちでもいいのに何でよりにもよってあいつなんですか!?」
大きな瞳で睨みつけ肩を尖らせてにじり寄る達美に勝は迷惑そうに息を吐く。
「確かにこの試験では好きな対戦相手を教師が決めることができる。無論、Zクラスの誰かしらでも良かったんだが……あいつの方が扱いやすいからなぁ」
「あ、扱いやすい? それってどういう意味ですか?」
「見れば分かる。少しは静かにしろ」
首を傾げる達美に勝はそげない対応で返すと達美はまた目を険しくする。
すると、達美を無視するかのように機械音声によるバトル開始のナレーションが入り、お互いが賭けるモノを機械らしく淡々と告げていく。
作業的なテンポで始まる戦いの準備に達美も目の前の恵奈の試合に集中しようとリング中央上に浮かぶ画面を見やった。
そして、そこに表示された文字に達美は仰天した。
* * * * *
達美が仰天している頃、リング内の恵奈も頭がいっぱいだった。
「ど、ど、どうしようッ……」
それはいつもの上り症もあるだろうが、主な原因はリング外から恵奈を見つめる観客たちにあった。
「なんだ、あいつのあの格好?」
「魔女のコスプレか~可愛いな~」
「あんな格好でバトルするとか常識ないのかしら」
自分に向けられた奇異の目に気付いてから恵奈は冷静でいられなかった。
「うぅ、逃げ出したい……でも、もしそんなことすれば……」
恵奈は想像する。
もしこの場から居なくなった後に勝が恵奈になんと言うか。
『お前があそこで逃げたということは、この写真は親に見せてもいいってことだな? なんならこの学校中にばら撒くってのもありだな。お前が退学した後もこんな生徒がいたってことの証明にもなるし、想像しただけで笑いが止まらないぜ。しゃ~はっはっはっ!』
恐怖と緊張で性格が更に悪く補正がかかった勝の想像に恵奈は脂汗と震えが止まらなくなる。
――どの道ここでやらなきゃ退学を待つしかない!
ならば、ここで覚悟を決めて勝負に出てやる、そう決意を固めた最中、恵奈の目の前から怒声が飛んだ。
「おいコスプレ女ッ! いつまで待たせる気なんだ!」
「ひッ!」
対戦相手である大句である。
その声で我に帰った恵奈が前を見ると、目の前には先程とはまったく違う風景が広がっていた。
リングを二分割して分けられたフィールドに違う世界があった。
大句のフィールドには廃墟が立ち並ぶ街が、恵奈が立つフィールドには陽の光が差さない不気味な墓場が広がっていた。
バトルはすでに始まっていたのだ。
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