三限目 文武不道? 万年補欠の黒木恵奈
第14話 勝のノルマ
遊学には生徒たちの意欲向上のため、成績をランキング形式で表示している。
良い戦績を残せば、その分だけポイントが与えられ、そのポイント数によってランキングが決まる。
そして、ランキングによってクラスが分けられ、上のクラスに行けば行くほどプロバトラーに近づける――
「そのランキングを上げる方法の一つが、この実技定期テストな訳だけど…………」
つま先で地面を叩きながら、苛立ちを隠さず達美が叫んだ。
「なんでうちのクラスはテストに参加しないのよッ!!」
現在、達美がいるのは、遊学本校舎内にある体育館。
ここでは通常の体育の授業の他に、一ヶ月に一回行われる定期テストが行われ、今も達美のそばでは他のクラスの生徒たち同士がランキングを上げるためにバトルを繰り返していた。
だが、ここにいるZクラスの生徒は達美と静の二人のみ。他のクラスメイトたちは姿すら見せていなかった。
その不甲斐無い現状に達美は自分のツインテールを振り乱して怒り狂っていた。
「仕方ないですわ。この定期テストは自由参加ですし、勝てないと分かっていて来る人なんていませんから」
「その考えが気に入らないって言ってるのよ! 勝ち負けなんてやってみるまで分からないんだから!」
「そうは言いましても…………」
怒りが収まらないと言った具合に肩で息をする達美の姿に、静は大きく溜息を吐き、その大きな胸を上下させる。
その姿を見て、達美は自分の胸元をチラッと確認し、
「うがぁぁぁぁ! イライラするわぁぁぁぁッ!」
「ひいいぃぃぃぃッ! な、何でですかぁぁぁぁぁッ!?」
八つ当たりの如く静の柔らかい頬をつねり上げていた。すると、
「次、109番。来なさい」
「あ、わ、ワタクシの番ですわ! それでは達美さんも頑張ってください!」
達美から逃げように担当教諭の声の方へ走り去る静。その後ろ姿を面白くなさそうに達美が鼻息を荒くする。
「ふんッ! いつもだったらトボトボ行くクセに…………こういう時だけは動きが早いんだから」
「それはそうだろ。お前みたいな闘牛を相手にするよりは幾分マシだ」
聞き覚えのある声に達美が隣を見上げると、そこには見知った顔があった。
「ま、勝先生!?」
あまりの衝撃に達美は仰け反るように距離を取るが、その姿を彼女が見間違える訳がない。
端正に整った顔立ちに特徴的なだらしなく着崩したスーツ。
その姿は間違いなく、Zクラスの臨時教諭、王道勝の姿だ。
「ご挨拶だな、声をかけただけでその反応とは」
「で、でも、何で先生がここに? 今日は通常の授業はないし、担当する教師も違うのに」
「あの狸じじいの指示だ。ここに居れば次のノルマが分かると」
「ノルマ…………? 一体、なんのお話ですか?」
達美が首を傾げると、勝は面倒くさそうに肩を落とした。
「あのじじいが言ってただろ? Zクラスを変えろと。そのために現状で一番やばい生徒をどうにかしろと言われた」
「一番やばいって、一体、どういう意味でですか?」
「あれを見れば分かる」
そう勝が首で指し示した場所は、現在実技テスト中の体育館中央。
その中央部分の一部のみ景色が二分されていた。
一方のフィールドは月明かりが照らす墓場。
もう一方は、一面が溶岩に満たされたフィールド。
勝が指し示していたのは、どうやら墓場のフィールドに立つ少女の方で、達美もその少女を見て驚く。
「あれは…………恵奈先輩?」
「やはりクラスメイトは知っていたか。ならば分かるだろ。あいつの抱えている問題を」
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