日本で
投稿
フェイスブックページの反響にソラはびっくりしていた。プロになってから、一度も日本を走った事がないのに、日本の人達がこんなに沢山応援してくれている事に驚いた。凄く凄く励みになった。
見てくれる人達がこんなに大勢いるのなら、こんな事も伝えたいなと思って、たまにタケルの事を入れた。
【負けた〜。例の少年との競争に負けた。
少年は半月前位から靴下を履く練習をしてて、オレも一週間前に同じ課題を与えられた。オレは少年に「どっちが早く履けるようになるか競争しよう」って言って、二人共一生懸命練習した。
そして今日、少年はオレの前で見事に一人で靴下を履いてみせた。
「わーい! ソラに勝った!」って本当に嬉しそうな顔をしている少年を見て、涙が出ちゃったよ。
「わ! ソラ、悔しくて泣いてる!」
少年はそう言ったけど、嬉し涙だったんだよ。強がりじゃなくて、ホントだから。彼は本当に頑張り屋だ。脚は麻痺しているし、体幹も効かず、手だって不自由なのに、少しずつ少しずつ出来る事を増やしていってる。
オレはまだ、あと少しつま先に手が届かない。でもすぐに出来るようになってみせるよ。
タ○ル、おめでとう!】
少年の靴下には自転車が刺しゅうされていてカッコよかったから、その靴下の写真を撮って投稿に入れた。
【立つ事だって、歩く事だって、オレにとっては小さな通過点。中々立てるようにならなくて、中々歩けるようにならなくて、もしも「タ○ル」に出会ってなかったら、すごくイライラが募っていただろうって思う。
けど、立てる事も歩ける事も、当たり前じゃなくて、すごくすごく尊い事なんだって気づかされた。
彼はもう立つ事も歩く事も出来ない。だけど、オレが立てた時、歩けた時に自分の事のように喜んでくれた。
「オレだけがどんどん出来るようになるのを見ていて、悔しくないのか?」って聞いたら「悔しくなんかないよ。ソラがまたレースに出て活躍する事は僕の夢なんだから」って言われた。
オレは自分の泣き虫を克服したいって思っているのに、コイツといると克服出来そうにないよ。
オレの歩みは充分のろい。まだ、エルゴメーターさえ乗れない。けど、タ○ルの歩みはもっともっとゆっくりだ。それを見ながらオレも我慢しなきゃって思う。
一歩一歩、頑張ろう】
投稿の内容には関係ないけれど、昼食に栗ご飯が出たから、その写真を撮って投稿に入れた。
【シーズンが終了して、もうすぐダイチさんがここに来てくれる。
メッセージで少しやり取りはしてたけど、会って話出来るのは四ヶ月ぶりだ。楽しみだな。でも「何だよ、ソラ。まだエルゴメーターにも乗れるようになってないのか」って怒られちゃうかな?
タ○ルはダイチさんの現役時代を知らない。けどオレがよくダイチさんの話をするもんだから、彼もダイチさんに会えるのをすごく楽しみにしている。
「三人で写真を撮って、フェイスブックページに入れてよ」って、タ○ルに言われている。
「え?」って思った。
オレは、怪我してから弱ってる自分の姿を見せたくなくて、自分の写真は入れていない。タ○ルもそうだろうなって、勝手に思ってて、名前出していいよって言われてからもちゃんとは書かなかった。だけど、こいつは強いなって思った。
よし! 三人で写真撮ったら、ここに入れるから楽しみにしててね】
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