2.ご挨拶

青白い空に雲が太い皺を刻み、渋滞、捌けて、薄い窪みが明るんで、鏡のように陰影を宿している


いつ降ってきてもおかしくなかった

空気に湿気が満ちており何度か雷鳴が轟いた

それなのに私はいつもより遠回りをして帰ることにした


遠目に映る赤信号が随分長いような気がした


新緑の零れ掛かったアーチ、そこから覗ける真っ白い橋

明るさ自動調節機能が急な天気の翳りに合わせてスマートフォン画面を暗くしたために、カメラが使い物にならない

いつかの夢に拒絶された気分の再来だった


川沿いの公園に白い布を持った人々が屯していた


聖火リレーの会場だった

帽子を脱いで佇んでいるすらっとした筋肉質の人の背中をすり抜ける

垂れ幕を写真に撮ると

咳払いが聞こえた

草の色の横道にドロップアウトしてゆく私


邪魔物の気分を背負いながらも、早足にならないくらいの歩幅を維持して、街を経由して帰りついた


のたくたと疲れながらアパートの鍵を開ける


コロナ禍の中、東京五輪は開催される

もうすぐここへ訪問看護の人が来る

マスクをする

コーヒーが出せない

換気を始める

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